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 インターネットで「白砂糖」を検索すると、ドキッとするような内容が書かれたサイトがいくつも見つかります。「白いのは漂白しているためだ」「食べると骨や歯を溶かす」「子どもがキレやすくなる」……。白砂糖は体に害があるとして、茶色い砂糖を使うべきだと指摘するサイトもあります。白砂糖って、そんなに危険なのでしょうか。調べてみました。

 そもそも茶色い砂糖と白砂糖は何が違うのだろう。精糖メーカーなどでつくる精糖工業会(東京都千代田区)の佐藤仁さんに作り方を聞いてみた。

 まず茶色い砂糖の一つ、黒砂糖。細かく刻んだサトウキビを搾ると汁が出てくる。その汁を石灰と一緒に煮て、要らない成分を取り除く。こうしてできた甘いサトウキビジュースを煮詰めるとできるのが黒砂糖だ。

 一方、白砂糖の作り方も途中までは黒砂糖と同じだ。細かく刻んだサトウキビを搾ると汁が出てくる。その汁を石灰と一緒に煮て、要らない成分を取り除く。

 しかし、白砂糖の場合、そこからさらに、濾過(ろか)したり、お湯で洗ったり、活性炭などを使うことで甘み成分のショ糖以外の成分を徹底的に取り除く作業が加わる。そして、遠心分離機にかけて、ショ糖の結晶を取り出す。これが白砂糖だ。白砂糖にはいくつか種類があるが、グラニュー糖が最もショ糖の純度が高く、99.9%以上を占める。

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 この過程に、ネットで話題になっている「漂白」のような化学処理は見当たらない。さらにわかったのは、ショ糖の結晶は透明無色なのだということ。それでも白く見えるのは、結晶が光を乱反射しているからだという。

 独立行政法人の農畜産業振興機構(東京都港区)によると、13世紀には元の初代皇帝フビライ・ハンがアラビア人の技術者を招き、黒糖を白い砂糖に精製していたとされる。

 さらに東洋を旅したイタリア商人のマルコ・ポーロが中国を訪れ、白い砂糖に出会い「東方見聞録」にその驚きが記述されているという。つまり白砂糖は、700年以上前からある食品だった。

 では、茶色い砂糖の仲間で、何となく体に良いイメージを持たれがちな「三温糖」はどんなものなのか。実は、白砂糖の作り方とほぼ同じだ。遠心分離機でショ糖を取り出した後の「糖液」には糖分がまだ残っている。そこで、再び煮詰めて結晶を取り出す工程を繰り返す。繰り返すうち、加熱により糖液に茶色い色がついていく。この糖液からできるのが三温糖だ。

 カラメルが含まれている製品もあるが、精糖メーカーの三井製糖によると、仕上がりの色を均一にするためで栄養成分を含め差はないという。ミネラル分は白砂糖の「ほぼゼロ」に対し、三温糖は0・25%ほどで差はわずか。これを見る限り、「茶色い砂糖は健康的で、白砂糖は不健康」とする理由はないようだ。

 黒砂糖はどうだろうか。確かに、ショ糖以外の成分が15%ほど含まれており、三温糖と比べると白砂糖との差は大きい。ただ、そもそも普段の生活で1日あたりにとる砂糖の量は多くない。

 WHO(世界保健機関)は肥満予防のため、1日にとる糖類をカロリーの5%(大人で1日25グラム)未満に減らすよう求めている。仮に黒砂糖を25グラム摂取するとして、得られるカルシウムは60ミリグラム。一方、18歳以上に推奨されているカルシウム量は650~800ミリグラムで、牛乳コップ1杯には220ミリグラムのカルシウムが含まれている。

砂糖の成分の違い

・白砂糖 ミネラル分はほとんど含まない。白砂糖のうち、グラニュー糖が最もショ糖の純度が高く、99.9%以上がショ糖

・三温糖 ミネラル分を0.25%ほど含む

・黒砂糖 ミネラルなどショ糖以外の成分が15%ほどある

 それなら白砂糖と茶色い砂糖を使い分けるポイントはどこだろう。

 女子栄養大学短期大学部教授の松田早苗さん(栄養学)は「料理によって使い分けるのはどうか。例えば、三温糖は角煮など肉を使う煮物に使うと、コクが出ておいしく仕上がる」と話す。一方、グラニュー糖などの白砂糖はそのものに風味があるわけではないので、食材の香りや色、風味を生かしたい時に役立つ。果物を使ったケーキに使えば、色みも果物の風味も損ねない。このほか、素材の持ち味を生かしたいジャム作りにも使われる。

「白砂糖が骨や歯を溶かす」は?

 松田さんに、白砂糖に対する様々な指摘についても聞いた。昔から多く見られるのが「骨や歯を溶かす」というものだ。白砂糖は酸性の食品だから、酸性に傾いた血液を骨のカルシウムで中和するので骨が溶ける、という指摘だ。

 これに対し、松田さんは、骨や歯を溶かすという言説を証明する科学的根拠は明らかでないとした上で「砂糖を多く含む清涼飲料水は加工食品に含まれるリン酸も多く含んでいるものがある。リン酸を多量に摂取すると、カルシウムの吸収が妨げられると考えられている」と話した。

 歯についても「虫歯にならないようにするためには、何より決められた時間に食事をとり、歯磨きでキレイな口内環境を保つことの方が大事」と指摘している。

 砂糖で子どもがキレやすくなるという説もネット上にはある。ミネラル分を失った白砂糖を口にすると血糖値が急上昇し、その後インスリンの働きで低血糖になり、脳の機能を低下させ、イライラやうつ状態を引き起こすという説だ。

 松田さんは子どもがキレやすくなったと言われていることに対しては「砂糖だけでなく、家庭環境や食事の栄養バランスなどその背景を分析する必要があるのではないか」と指摘する。

 ここまで様々な人に会い、砂糖について調べてきたが、白砂糖が体に悪いというはっきりした科学的根拠は見つからなかった。

 ただ、取りすぎは禁物ということは一致している。松田さんは「甘いものは気分転換になり、決してダメとは言わないが、3食バランスの良い食事をまず基本にして欲しい。食事の適切な量は人それぞれだが、体重や体脂肪率などを見ながら調節して欲しい」と話している。

<アピタル:医療と健康のホント>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/honto/(杉本崇)