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 電動アシスト自転車に乗車中の高齢者が、事故で死亡するケースが増えている。運転免許の返納後の新たな交通手段や、自転車の運転を体力的にあきらめた年齢層の新たな「足」としての利用が広まる。ただ、体力や判断力の低下を理解したうえで乗る必要がありそうだ。

 8月12日、愛知県春日井市の信号のない十字路交差点で、自転車とタンクローリーが出合い頭に衝突する事故があり、自転車の川井晧(あきら)さん(当時93)が死亡した。

 川井さんが乗っていたのは電動アシスト自転車。8年前、「これなら乗れるかな」と約8万円で買った。一昨年までは毎年海外へ旅行に行くほど体力があった川井さん。90歳を超えてもアシスト自転車に乗り、一人でスーパーや病院、図書館へ行っていた。妻(88)は「坂道を得意げに『どうだ』と言って走っていました。アシストなら乗れるし、普通はいけないところにもいける。『本当に電動自転車のおかげね』と言って暮らしていたんです」。

 現場は川井さん側に一時停止の標識があった。相手のタンクローリーの運転手からは「かなりのスピードでこられて、正面でぶつかった」と説明を受けた。

 妻は、川井さんに不注意があったのではと考える一方、最近、川井さんがアシスト自転車について「重い」「乗り降りの回数を減らしたい」と漏らしていたのを思い出した。総重量は20~30キロ。川井さんは停止中に重さがずしりと腕にかかったり、倒してしまって起こせなくなったりするのを恐れていたという。

 なるべく停車しないように乗っていて、一時停止の所を突っ切ってしまったのではないか――。妻はそう考えている。

 愛知県内では今年、アシスト自転車の死亡事故が9件相次ぎ、いずれも高齢者が亡くなっている(11月14日現在)。愛知県警の幹部は「今まで自転車をあきらめていた高齢者層が、電動アシスト自転車なら乗れるようになっている」とみる。

 あま市の石田敏一さんは1月、アシスト自転車で日課の喫茶店へ行く途中、出合い頭の事故で命を落とした。当時93歳。長男の富男さん(64)によると、足腰は丈夫だった。ただ、数年前に家族から車の運転を止められ、代わりにアシスト自転車に乗るようになった。「活動範囲も広くなる。一度乗ると普通の自転車には戻れないでしょう」

 日進市の磯村周魚(かねお)さん(当時94)も9月、アシスト自転車に乗車中、交差点で乗用車とぶつかり、死亡した。近年は徒歩2、3分の畑にもアシスト自転車や三輪自転車を使うようになっていた。長男の源一さん(69)は「多少足腰が悪くなってきたから、逆に自転車に乗るようになった」と話した。

年間の生産台数、9年で26万台増

 自転車事故そのものは年々減少するなか、電動アシスト自転車の事故は全国でじわじわと増えている。

 警察庁によると、アシスト自転車の死亡事故は、2008年の29件から昨年は42件になった。高齢者が目立ち、過去10年は毎年、死亡事故の8~9割が高齢者だ。高齢者の割合は自転車事故全体と比べて高い。

 国内メーカー初のアシスト自転車は1993年に登場。自転車産業振興協会によると、年間生産台数は09年の約31万台から、昨年は57万台に増えた。高齢者による運転免許証の自主返納の影響なども背景にあるとみられ、アシスト自転車購入に補助金を出す自治体もある。

 公益財団法人交通事故総合分析センター(東京)の西田泰・特別研究員は、アシスト自転車の利用者が増えたことで、事故も増加しているとみる。アシスト自転車は比較的速度が出やすく、「高齢者が操作ミスをしやすかったり、車の運転手が予想する以上に速く出てきたりする可能性がある」と指摘する。

 特に高齢者は、ブレーキやハンドルを操作する能力が、本人が思う以上に低下していることがある。西田さんは「今まで危険な目にあったことがなくても、突然、致命的な事故に遭うこともある」としている。

■安全に乗るた…

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