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 レスリング女子で五輪4連覇の伊調馨(34)=ALSOK=が、14日の全日本女子オープン選手権(静岡・三島市民体育館)で約2年2カ月ぶりにマットに戻り、優勝した。日本協会の栄和人・前選手強化本部長からのパワーハラスメント問題を乗り越えた形だが、前人未到の五輪5連覇への道のりは平坦(へいたん)ではない。

 57キロ級で出場した伊調は、2016年リオデジャネイロ五輪以来の公式戦を3連勝で飾り、「レスリングをもう一回再開できたことが幸せ」と話した。

 今年に入り、伊調は日体大で体を動かし始めた。その矢先、栄氏によるパワハラ問題が表面化し、周辺が一気に騒がしくなった。

 今大会の優勝で、伊調は12月の全日本選手権(東京・駒沢体育館)の出場権を得た。例年6月ごろ開催の全日本選抜選手権を含め、来秋の世界選手権の出場権がかかる。その世界選手権でのメダル獲得が東京五輪代表に直結するが、本人は五輪を目指すかどうかは明言を避けた。

 「年齢も年齢だし、生半可な気持ちでは目指せないのが五輪。本当に目指せる環境をつくってからでないと、なかなか」

 その「環境」で大きなウェートを占めるのは、04年アテネ五輪男子フリースタイル55キロ級銅メダルで、長年指導を受けてきた田南部力氏のことだろう。伊調は「フィジカル的にも技術的にも必要不可欠な存在。一緒に頑張りたい」と断言した。

 ただ、伊調とともに栄氏によるパワハラ被害を認定された田南部氏は現在、警視庁の仕事の傍ら、日体大の外部コーチとして伊調を指導しているに過ぎない。

 伊調、田南部氏、日本協会それぞれの立場や事情が絡まり、12年ロンドンや16年リオのときのような二人三脚の態勢がつくれるかは不透明だ。伊調の慎重な物言いがそれを物語る。

 ALSOKの大橋正教監督は一筋縄ではいかない状況を鑑み、「自分で考えてやれるようにしなくては駄目」と伊調に独り立ちを求めた。「本人も分かっているとは思いますが」

 57キロ級を主戦場にすると明言した伊調にとって、東京五輪に出るにはリオ五輪63キロ級金の川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)ら国内のライバルとの対決も予想され、簡単ではない。

 日本協会は伊調に対し、11月に行われる全日本合宿への参加を呼びかけ、伊調も前向きだ。「絶対崩れない気持ちをつくっていって、(五輪挑戦という)発言をしたい」と伊調。ベストな「環境」を求め、試行錯誤の日々が続く。(金子智彦)