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医の手帳・災害医療(3)

 災害によって自宅に住めなくなると、避難所での生活が始まります。多くの避難所は体育館や地域のコミュニティーセンターなどに開設され、生活環境は必ずしも十分ではありません。避難所が混み合っている、周囲の騒音がうるさいなど、様々な理由で自家用車で寝泊まりをする「車中泊」をされる方が大勢います。

 車中泊で特に注意すべき災害関連健康被害が、いわゆる「エコノミークラス症候群」です。正式には肺動脈血栓塞栓(そくせん)症と呼ばれ、下肢の静脈にできた血栓が、血流によって運ばれ、肺の血管に詰まることで発症します。

 2004年の新潟県中越地震では、エコノミークラス症候群で7人の方が亡くなりました。水分を控えることで血液が濃くなること、狭い場所で足を曲げるなど同じ姿勢で長時間過ごし、下肢の血流が滞ることなどが下肢の静脈血栓形成の要因と言われています。

 予防のために必要なことの一つは「十分な水分をとること」です。また、なるべく足を伸ばせる姿勢や、定期的にかかとの上げ下ろしなど足の運動やふくらはぎのマッサージなども効果的です。お酒や喫煙も控えた方がよいと言われています。

 車中泊の方ばかりではありません。避難所生活者で飲料水が十分に支給されても、トイレが混んでいる、不潔などの理由でトイレを敬遠し、水分を控える傾向があります。高齢者の方は同じ姿勢で寝込んでしまうことも多く、避難所管理者はトイレ環境や高齢者の動線にも配慮する必要があります。段ボールベッドの導入など、足を伸ばせる環境整備も重要です。

 予防には、弾性ストッキングの着用が有効です。避難所での弾性ストッキング配布が近年の災害では実施されています。危険の高い車中泊の方が、避難所での配布情報を知らない場合がありますので、常に弾性ストッキングの情報には耳を傾けておきましょう。

<アピタル:医の手帳>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/(新潟大学医学部災害医療教育センター 高橋昌特任教授)