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 パリ市内のルーブル美術館近くでそばを提供する日本食レストラン「円(えん)」では、今春からかつお節を使い始めた。日本一の産地・鹿児島県枕崎市の業者がフランスで「現地生産」したものだ。欧州でも珍しい試み。主に使うのはそばのだし。お浸しなどの小料理に添える際にも重宝しているという。

 本石一成(かずしげ)料理長(29)は「日本のかつお節と香りは違うが負けていない。『仏産』を使えるといううれしさもある。必ずEU(欧州連合)にも浸透していくと思う」と期待を寄せる。カツオはインド洋産だ。

 かつお節工場は仏西部ブルターニュ地方のコンカルノー市にある。大西洋に面した港町だ。2017年4月から本格的に販売が始まった。従業員6人が働いている。

 枕崎市のかつお節製造業者ら10社が出資して「枕崎フランス鰹節(かつおぶし)」を14年4月に設立した。大石克彦社長(60)は「和食を世界に広げるには、かつお節やだしの文化が欠かせない」。資本金は5千万円。地元の鹿児島銀行や鹿児島信用金庫の融資を受け、工場建設までに約3億円がかかった。

 きっかけは、大石社長が13年にかつお節のPRのために訪仏した時のことだ。現地のみそ汁はだしが使われていなかった。「お湯にみそをまぜただけ。これでは和食は広がらない」

 同年にユネスコ無形文化遺産に和食が登録されたことを後押しに、かつお節の輸出を考えたが壁にぶつかった。

 製造過程でカツオの切り身をまきでたいた煙でいぶす際、発がん性のある「ベンゾピレン」が発生する。これが欧州委員会規則の基準を満たさないことがわかった。さらに、国際的な衛生管理基準「HACCP(ハサップ)」の基準を満たす製法にしないと輸出できない。それなら現地に工場をつくろうと大石社長は決断した。

 新たな製法を編み出すまでは試行錯誤の連続だった。まきをたかずに電気の熱を利用するなどして、煙の量や質、向きなど様々な方法を繰り返し、2年を掛けて基準をクリアした。

 「可能な限り日本のものに近づけた。これは新しい仏産のかつお節だ」と大石社長は胸を張る。

 別な問題もあった。EU圏内にある1万店以上の日本料理店は多くが中国や韓国産のかつお節を使っていた。同社の製品より2~3割安い。「煙をあてないで作られていて味が全然ちがう。いいものを作れば乗り換えてくれると思っていたが」。中韓産の安さは大きな壁のままだ。

 売り上げが軌道に乗らない中で、従業員の雇用も増やせない。家庭用には小さなパックで販売したいが、手作業で詰めるため人手不足で作れていない。当初目標の売り上げ2億円にはまだほど遠い。

 ただ、よい兆しもある。工場がある地元を中心にかつお節が使われ始めた。仏料理のスープのだしをかつお節でとったり、バターやチーズに粉末にしたかつお節を混ぜたり。工場で働くルトレック裕子さん(47)も「自然食を売る店で試食販売をしているが、健康志向の仏人が普段の料理に使い始めた。『DASHI(だし)』という言葉も少しずつ広まっている」。

 かつおエキスや、粉末にしたかつお節など、使いやすく加工した商品も計画している。大石社長は高級日本料理店に足を運び、セールスを続ける。かつお節を削って見せて、「これは魚だ」というと現地の客たちは目を丸くするという。「かつお節の香りに客が集まってくる。高級店で普及させて、一般家庭まで浸透させたい。『仏料理にはかつお節』ということになればいい」(野崎智也)

■消費の形と共に変わ…

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