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 その瞬間、会場に凍りつくような緊張が走った。

 21日(日本時間22日)に閉幕したフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ今季初戦、スケートアメリカ。女子ショートプログラム(SP)前日の19日の公式練習で、曲をかけて滑っていた宮原知子(関大)に、坂本花織(シスメックス)が接触してしまった。ともに後ろ向きで衝突し、その場で転倒。幸い、2人にけがはなかった。

 宮原の曲をかけての練習が終わると、坂本は一目散で滑っていき、何度も謝った。宮原は笑顔で対応したが、坂本は今にも泣き出しそうだった。「知子ちゃん(宮原)に申し訳ないことをしてしまって。すごいワーッてなって、周りが見えなくなっちゃった。練習は最後まで続けられたけど、すごいおびえてしまって。なかなか納得のいく練習ができなかった」

 精神的ショックを抱えたまま、SPの日を迎えた。「切り替えてやろうと思って、しっかりこの試合に向けて集中した」。9月のロンバルディア杯(イタリア)で9位と大崩れしたSPは、この大会前まで朝も夜も重点的に練習してきた。そして、ノーミスの演技。出来栄え点(GOE)は全要素で加点がついた。「指先まで気をつかって滑れた。ジャンプは何も言うことないです」。精神的に成長したのではないかと聞かれ、「ちょっとだけね」とニヤリ。SPは首位宮原と2・57点差の2位につけた。

 翌日のフリーも、ほぼノーミス。満面の笑みで、思わず両拳を握った。142・61点。直後に滑る宮原に重圧をかけ、この時点で首位に。それでも、勝てるかもしれないとは思わなかったという。「いや、だって、知子ちゃんノーミスするから。絶対に(私の)上に来るだろうなと思いましたよ」。予感は当たった。宮原もほぼノーミスの演技を披露。フリーも宮原に次いで2位で、合計は5・81点差。1年前の同大会と同様に、優勝が宮原、2位が坂本だった。

 2人はともに平昌(ピョンチャン)五輪代表。ただ、坂本は「知子ちゃんの壁はまだまだ分厚いし、高い。努力してきた数が違うんで。技術とかスケーティングとか表現とか、全然及ばない」。成長を感じた大会でもあり、改めてライバルとの距離感を知った大会でもあった。「平昌五輪に行けるとは思っていなかったし、すごくいい経験ができた。それを生かして、4年後は自信をもって(北京)五輪に出られるように頑張りたい」(エバレット=大西史恭)