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遠藤乾=国際

△細川昌彦「“オール・アメリカ”による経済冷戦」(Voice11月号)

 米ソ冷戦終結からほぼ30年。今年を起点として米中新冷戦が始まり、後世の歴史家は過去30年を「冷戦間期」と記述するだろうという論調が相次ぐ中(たとえばZack Cooper)、この細川論考は、米中の対立が異質性認識に基づいた体系的な冷戦であると論じ、そうした見解を裏書きする。この間のアメリカによる対中政策の変化は、2015年に出された「中国製造2025」などを契機に、トランプ大統領就任以前から始まっており、共和・民主両党にまたがる議会のコンセンサスに基づき、経済だけでなく軍事安保から文化にわたるという。それは、新型の対中輸出管理の形を取るが、それはAIや量子コンピューターなどの新興基礎技術を含み、中国人研究者などへの制限に及び、再輸出規制などを通じて日本企業への影響も免れないという見方を示す。

△ソーステン・ベナー「米欧関係に生じた大きな亀裂 金融自立と新同盟を模索するヨーロッパ」(フォーリン・アフェアーズ・リポート10月号)

 イラン核合意を破棄しただけでなく、対イラン再制裁を強いる米トランプ政権を前にして、欧州では自立への機運が高まっている。特に決済システムを欧州化しようと独仏両国は動いており、それは困難を伴うだろうが、逆にそれを選択しないという理由もないとベナーは論じる。域外の日本にとって留意すべきなのは、ドイツ外相マースなどが、その延長上で、多国間主義を守る有志連合を「新しい同盟」として志向していることであろう。

△横田正顕「ポルトガルは『反緊縮』路線に転じたのか? 2015年総選挙と社会党少数派政権の意味」(シノドス、10月10日)

 ニュアンスに富んだ欧州左派、緊縮の動向分析だ。2010年代のユーロ危機においては、ポルトガルはギリシャとは異なる形で緊縮財政に忠実であった。しかし、15年の総選挙の結果を受け、結党以来最多票を獲得した左翼ブロックが、ポルトガル政治史上珍しい形で、社会党と共産党を橋渡しし、閣外から社会党政権の成立に協力し、中道右派政権の継続を阻止することで、左派陣営の協力が新たな政治的選択の可能性を切り開かれたとする。そこでは、緊縮の大枠が放棄されたわけではないものの、新たな公共投資を行わず、個人所得税の累進性の強化や法人税の引き下げ停止によって社会保障の財政基盤を強化しつつ、緊縮の穏健化を図った。これは、ポピュリズムでもなく、かといって単なる緊縮では終わらない、興味深い事例といえよう。

木村草太=憲法・社会

△荻原浩・阿部泰尚の対談「“いじめの加害”という文脈の中で」(世界11月号)

 いじめに関する重要書『いじめと探偵』の著書と、小説家の対談。いじめと称して、性被害を伴う犯罪が行われる場合に、警察への相談が行われる。このとき、警察は、加害者の摘発は重視してくれる一方、被害動画の拡散の防止など、被害者のその後の生活の平穏に気を使ってくれないケースがあるという指摘は興味深い。また、いじめ防止対策推進法における「出席停止」措置が機能せず、むしろ被害者を休ませる運用が多いという深刻な事態も紹介される。

 なお、『いじめと探偵』で紹介される、被害児童の母にセクハラをした校長が、その様子を録音され、セクハラの告発を恐れ、いじめ解決のために全力を尽くすエピソードは、いじめ対策は「現場のやる気」の問題が大きいと気づかされる点を含め必読である。

△横田光平「児童虐待への国家介入――分析的考察」(法律時報10月号)

 児童虐待についての公的介入の基準について、理論的考察を行った論文。児童虐待への対応については、児童相談所の実態や、当事者たちの体験などの研究も必要だが、他方で、国家や法が、どのような場合に介入できるのかを理論的に分析することも重要である。この論文では、「子の福祉」の概念を、①「積極的な子の福祉」と②「消極的な子の福祉」に区分けし、強制的な保護や刑罰、親権変更命令などの公的介入の根拠は②であるべきだと指摘する。また、家庭教育支援法や離婚後面会交流の制度についても、②消極的な子の福祉以外の理由で一律の規制を課すことは妥当でないと指摘する。

△特集「クラシックに未来はあるか」から片山杜秀・大友直人の対談「マエストロと考える危機の乗り越え方」(中央公論11月号)

 著名なクラシック評論家・指揮者の対談。日本のオーケストラの収支構造の表は興味深い。数人のバンドの演奏を数万人で楽しめるロックやポップスと異なり、大人数の演奏を少人数で楽しむクラシックは、演奏料収入以外の方法による支えが不可欠。ただし、大阪の例を見ても分かるように、公共団体による支援は、今後、縮小せざるを得ない。国家と文化の関係を考える上で、重要な問題提起を多く含む対談と思われる。

■高端正幸=財政…

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