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 今年の文化功労者に、京都大の森和俊教授(60)が選ばれた。細胞内のたんぱく質の品質管理にかかわる仕組みを解明したことなどが評価された。大学内で共同取材に応じた森さんは「基礎研究は無駄も多いが、大化けするものも出てくる。広い視野で基礎研究を支援してもらうとありがたい」と訴えた。

 森さんは1989年、最先端の生物学を学ぶために渡米。細胞内の器官にたまった異常なたんぱく質を検知し、修復する「小胞体ストレス応答」という現象の解明に挑んだ。当時、この現象はほとんど知られていなかったが、現在では糖尿病やがんなどとも関わりがあることがわかってきた。

 森さんは「米国で、小胞体ストレス応答という未知なる山のふもとにたどりつき、そこから30年、ひたすらこの山を登り続けた。この分野が『文化』として認められ、大変うれしい」と語った。

 酵母やヒトの細胞を使った「細胞レベル」の研究で、実績を積み上げてきた。さらに2007年からは、実際に生きものの体のなかで、小胞体ストレス応答がどれほど重要なのかを解き明かすため、研究を続けている。「小胞体ストレス応答に関わる遺伝子を失ったマウスは、生きてうまれてくることができない。非常に生命の根本で重要な現象だ」

 この現象が、老化とも深いかかわりがあることも、わかってきた。老化によって、異常なたんぱく質を修復する分子が脳の細胞で少なくなれば、アルツハイマー病やパーキンソン病につながると考えられている。「病気はどうして起こるのか、ということも解明していきたい。病気との因果関係を解明することで、最終的には病気の治療法が見つかるかもしれない」と意気込む。

 ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった本庶佑(ほんじょたすく)・京大特別教授は、基礎研究から、がん治療薬「オプジーボ」の開発へとつなげた。森さんは「オプジーボのように基礎科学から始め、だれも思っていなかった展開になることもある」と指摘。「応用研究は成果が出るのは早いかもしれないが、短期的な視点では大きな発展につながらない」とし、基礎研究の重要性を強調した。

 最近は、生物学を志す学生が少なくなっているという。「若い人には挑戦してもらいたい。博士課程という経済的にも厳しい道に進もうとしている人を雇用するなど、挑戦する人の背中を押してあげる世の中になってほしいと思う」

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(後藤一也)