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 お子さんがうんちを出せずに困ったことはありませんか。硬い便のかたまりをうまく出せず、泣き叫ぶこともありますね。子どもの急な便秘への対処法や、慢性化させない工夫、慢性的な便秘になってしまったときに医療機関で行う治療について、子どもの便秘に詳しい小児外科医の中野美和子さんに聞きました。

子どもの便秘は直腸にたまる

――子どもの便秘は、大人とは違うのでしょうか。

 子どもと大人では便秘の状況が全然違います。一般的に、大人は直腸の手前のS状結腸という場所に便がたまりますが、子どもは肛門(こうもん)のすぐ手前の直腸にたまります。出したいのに出せなくて、騒いだり大泣きしたりします。

 旅行したり風邪をひいて食事量が減ったりしておこる急性の便秘は、基本的には一度硬い便や塊の便が出ると治ります。強い薬を使わずに様子を見ても、1週間くらいで便が出るので良くなります。ところが、それが1カ月、2カ月……と続くと、直腸が変化して慢性化してしまいます。この慢性化が問題なのです。

慢性化するとぶかぶかの腸に

――慢性化するとは、どのようなことでしょう。

 肛門のすぐそばの直腸は、本来はぺちゃんこです。そこに便が下りてきて直腸の壁を押し広げると、その信号が脳に伝わって便が来たと認識され、出したくなって出します。これが本来の排便です。

 ところが、直腸にいっぱい便がたまっていることが続くと、ゴムが伸びるように直腸の壁も伸びてしまい、ぶかぶかになってしまいます。ぶかぶかの腸だと1日くらいの便の量では壁を押さないために、便として認識されません。いっぱいたまって苦しくなってから出したくなり、なんとか出そうとするので大騒ぎになります。

 子どもは、苦しいから出すのが嫌になって我慢する。我慢するからますます便がたまってしまう。心理的な悪循環と直腸の状態の悪循環が重なって、なかなか治らなくなります。診療ガイドラインでは、こうした状態が1~2カ月続くと、慢性便秘症(慢性機能性便秘症)と診断します。

治療の基本は生活改善、詰まりがあれば取り除く

――便秘の治療はどのようなことをするのでしょう。

 基本は食生活と生活環境を整えることですが、出口で詰まってしまっている場合には、まずその詰まりを取ってあげることが必要です。飲み薬で出る子もいますし、浣腸(かんちょう)を使うこともあります。

 慢性化して直腸の壁が伸びてぶかぶかになってしまっている場合には、1回全部出したあと、維持治療を行います。具体的には、少量の薬を長く飲み続けたり、腸がぶかぶかになってしまっている時に、ぶかぶかを戻して自分でラクに排便できるようになるまで、浣腸を毎日続けたりします。治療のゴールは、自分で毎日ラクに出せるようになること。2~3週間で治る子もいれば、数カ月、数年かかる子もいます。

――子どもの便秘に使う飲み薬にはどのような物がありますか。年内にも、新しい治療薬のポリエチレングリコールが保険適用になる見通しですね。

 子どもの便秘治療では、浸透圧性下剤といって、便に水分を呼び込んで柔らかくし、かさを増して出しやすくする酸化マグネシウムが一番多く使われています。本来、子どもへの保険適用はないのですが、市販もされている薬で、医師の裁量で処方しています。他に、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促す刺激性下剤のピコスルファートナトリウムもよく使われています。ただ、刺激性の下剤の使用は最低限にしましょうという原則があるので、酸化マグネシウムがまず使われています。

 ポリエチレングリコールは、海外では子どもに最初に選択する薬として使われている歴史ある薬です。医師の学会から何度も製薬メーカーなどに働きかけて、やっと日本でも使えるようになります。詰まりを取ったあとの維持治療に使っていけるお薬だと思います。

 他に、浸透圧性下剤の一種で、オリゴ糖や麦芽糖、ラクツロースなどの薬もありますが、作用が弱いので、頑固な便秘に対してあまり効果は期待できません。

赤ちゃんの便秘のケアと受診の目安は

――赤ちゃんも便秘になりますね。受診の目安と家庭でできるケアを教えてください。

 2、3日出なかったら綿棒刺激をしてみてください。綿棒の先に潤滑油(ワセリンなど)を付けて、肛門に入れてくるっと回します。4~5日出なかったら医師に相談した方がいいですね。2、3日の便秘でも、すごく機嫌が悪いとか、おなかが張っている、出口から便が見えているのに出せなくて苦しんでいるような時は、グリセリン浣腸を使ってあげてください。6カ月未満の子どもなら5ccでも良く効きます。

 ほかに、お風呂で温まると身体が緩むので、下半身だけ湯に入れてみるのも良いと思います。

――グリセリン浣腸は、使いすぎるとクセになったり、便意を感じにくくなったりするのでしょうか?

 そのような話に科学的な根拠はありません。毎日使っても何も問題はありません。浣腸を使った方が排便のコントロールが良く、QOL(生活の質)が上がるのであれば、毎日でも使えば良いのです。

 ただ、飲み薬でも浣腸でも、薬を使い続ける時には、医師のアドバイスがあった方がよいでしょう。私がアドバイザーをつとめるNPO法人日本トイレ研究所のホームページ(https://www.toilet.or.jp/別ウインドウで開きます)に、排便外来のある医療機関のリストもあるので参考にしてみてください。

子どもの排便、親がチェックを

――おむつが外れて子どもが自分でトイレに行くようになると、親の目が届きにくくなります。トイレ研究所のインターネット調査では、小学生の16.6%が便秘との報告もありました。子どもの便秘を慢性化させないために、親にできることはありますか。

 子どもの排便をチェックすること。まずはそれが大切です。自分の子どもは毎日便が出ているか、ラクにしているか、トイレに居る時間が長すぎないか、まずはチェックしてみてください。

 毎日見張っているわけにもいかないので、年に1回1週間くらい、排便日誌を付けてみてください。カレンダーに丸をつけるだけでもいいのです。

 本来、人間は便をしたあとに快感があるのが普通です。苦労して出すのは全て便秘といえます。便秘の苦しみは、取ってあげた方が良いし、取ってあげることができます。そのことを、みんなに知って欲しいです。

    ◇

<なかの・みわこ>

 小児外科医。2004年、さいたま市立病院に子どもの排便外来を開設し、長く診療に携わってきた。現在は、同病院と吉川小児科(東京都世田谷区)にて、非常勤で外来を担当している。NPO法人日本トイレ研究所のアドバイザーも務める。学校法人神戸学園理事。

 

<アピタル:もっと医療面・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/iryou/(聞き手・鈴木彩子)