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 高校野球の秋季関東地区大会は28日、甲府市の山日YBS球場で決勝があり、桐蔭学園(神奈川2位)が春日部共栄(埼玉1位)を9―6で下し、24年ぶりの優勝を果たした。11月の明治神宮大会に出場する。

 キャプテンとは――。桐蔭学園で主将を務める森敬斗(2年)は言う。「雰囲気を変えていく存在」。それを体現するアーチが生まれたのは、同点の六回だ。

 2死一、三塁、変化球をさらう。白球が右翼フェンスを越える前に、森は歩を緩めた。勝ち越し3ラン。桐蔭ベンチに、仲間の歓声がこだました。

 苦しい展開だった。一回に5得点を先行。それを序盤のうちに追いつかれた。その後は、一進一退の攻防。重苦しさが漂うベンチに、冷静な声が響いていた。「あわてるな」「ここからだぞ」。森だった。

 味方ベンチだけでなく、球場全体の空気を変えた値千金の一発。それもこの日2本目のアーチなのに、ダイヤモンドを巡る森の表情は引き締まったままだった。「この先のイニングもある。笑顔が出たら、自分にもチームにも油断が生まれるので」

 主将として、チームの勝利を第一に考えてきた。遊撃手として守備の要も務めるが、中盤までのピンチでは投手に声をかけない。「信頼しているので」。主将の発言には影響力があることも、自覚している。強い声かけはときに、投手の不安やいらだちをあおってしまうこともある。だから、終盤の勝負どころだけマウンドに近づく。

 この日もそう。3点リードの九回、三塁打を浴びたエース長谷川颯に駆け寄り、「いつも通りに」とシンプルな言葉で背中を押した。無失点で切り抜けて、秋の関東の頂点にたどり着いても、森に笑顔はなかった。「普通にうれしかったですけど、そんなに笑顔ありませんでした?」。自覚がないほど、試合にのめり込んでいた。

 2003年春の選抜を最後に甲子園から遠ざかっていた桐蔭学園。この関東大会で、久々の選抜出場をほぼ手中におさめた。

 いまの高校野球界で「桐蔭」と言えば、大阪桐蔭の名があがる。西谷浩一監督は「主将力」という言葉を大切にし、キャプテンを中心に隙の無い「常勝軍団」を築いてきた。17年春は福井章吾(慶大)を擁して選抜を制し、18年は中川卓也を軸に史上初となる2度目の春夏連覇を果たした。

 東の「桐蔭」の主将も、チームにおける存在感なら負けていない。今大会は1回戦の常総学院(茨城1位)戦の逆転サヨナラ満塁本塁打を含め、勝負どころでの3本のアーチ。これで高校通算6本というのだから、驚きの勝負強さだ。片桐健一監督は「打席のなかで、どうチームに貢献するかを考えている。(得点が)欲しいところで最高の結果を出してくれた」と認める。

 「この関東でもう一回、桐蔭学園の名前を世の中に出すことはできた。でも、まだ向こうの方が有名。もっと勝たないと」と森は言う。古豪復活を淡々と狙っている。(小俣勇貴

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