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奇跡の高校(中)

 ソフトバンクの孫正義社長の側近だった荒井優(43)は、北海道の私立高校を運営する学校法人理事長である父親から「校長になってほしい」と請われ、転身を決意した。(文中敬称略)

「悪評御三家」

 2015年12月28日、荒井は父の聡に呼ばれ、札幌新陽高校(札幌市)の緊急職員会議にやってきた。教職員50人の視線が集まる。

 「来年1月末で今の校長先生がお辞めになります。後任は私の息子です」

 職員室に白けた空気が漂った。経営難で、しかも「問題校」とされた新陽高校は、校長が3年間で3人も辞める。

 〈よりによって、その後任が理事長の息子かよ〉

 教職員たちのそんな心の声が聞こえるような気がして、荒井は肩身が狭かった。

 札幌市など石狩管内にある高校約70校のうち、新陽高校の偏差値は最下位に近かった。「札幌の高校の中で、悪評の御三家でした」と荒井。着任後、町内会にあいさつに行くと、「おたくの生徒が、たばこを吸ってチェーンを振り回していた」と言われ、経済界との集いでは「高校生のころ、あんたの学校の生徒にカツアゲされたよ」と苦言を呈された。荒井によれば、そうした問題を起こす生徒は「ずいぶん前のことで、今はいない」というが、一度染みついたイメージを払拭(ふっしょく)するのは容易ではなかった。

あとから売り上げを増やせない

 いま1万5千人いる札幌市内の中学3年生は7、8年後には1万4千人に減る。少子化が進めば、評判がよくない高校ほど生徒集めは苦しくなる。1学年の定員280人に対し、14年度の新入生は定員割れの238人、続く15年度は197人にまで落ち込んだ。校長就任まもない16年2月初め、荒井は春の新入生数を知った。過去最低の155人だった。

 私立の学校は、入学する生徒数をもとに収入が決まる。荒井は校長に就任するなり、通常のビジネスとは異なる高校経営の難しさに直面した。

 「1年に1回しか入学する機会がないんです。あとになって売り上げを増やせない。むしろせっかく入学した生徒が退学して、売り上げが減ることもありうるわけです」

 学校側の進路指導の力不足や生徒の家庭の事情などもあいまって、新陽高校では毎年1学年のうち10%近くが退学していた。

 荒井が収支見通しを計算すると、1学年250人いないと高校の経営は成り立たないが、それを100人近く割り込んでいた。理事長の長男(創設者の孫)というだけで何の実績もない自分に求心力はない。

 「新入生獲得にもう1回失敗したら僕は終わり。先生方から信頼を失ってしまう」。そんな絶望的な気分に陥った。

「なんかヤベーやつが来た」

 〈本気で挑戦する人の母校〉

 荒井は16年3月、新たな教育目標を掲げた。全校がそろった全員集会で「学校を変える」とあいさつしたが、「なんかヤベーやつが来た」(当時の2年生男子)と冷ややかな視線をむける生徒も少なくなかった。

 荒井は教職員の前で「次(17…

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