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 プラスチックごみによる海の汚染が、世界的に問題になっています。紫外線や波で劣化して細かく砕けた粒「マイクロプラスチック」が、生態系に影響を及ぼすと心配されています。このところ、企業などがプラスチック製ストローの使用を中止する動きが目立っています。身近な使い捨てプラスチックをどう減らすのか、改めて考えます。

プラ片 世界中の海汚染

 身近な使い捨てプラスチック製品やプラスチックごみについて、さまざまな意見が寄せられました。

 横浜市の石原秀樹さん(65)

からは「海岸の砂をすくうとマイクロプラスチックが無数と言っていいほど出てきます」とメールが届きました。5ミリ以下の微細な粒「マイクロプラスチック」は世界中の海に広がり、魚や貝、海鳥の内臓から見つかっています。

 石原さんは、横浜市金沢区の野島海岸に面した野島公園にある横浜市野島青少年研修センターで、宿泊施設に来る小学生への体験プログラムを通じて、海のプラスチックごみ問題を教えています。

 石原さんと砂浜を歩くと、青や赤、緑色などの細かいプラスチック片が無数に落ちていました。石原さんと一緒に拾いましたがキリがありませんでした。石原さんは体験に来た小学生たちに「家族にも話してください」と言うそうです。「深刻さを実感しないと、解決への道も上滑りになります」

 京都府亀岡市の小学5年生、谷口葉月さん(11)は実体験とともに、意見を送ってくれました。学校に来た大学の研究者から「プラスチックごみを海の生物が食べてしまうと死んでしまうことがある」という話を聞き、「プラスチックは便利ですが、悪いこともあるのだと思いました」と話します。夏休みに日本海側の海岸のごみ拾い活動に参加し、特にペットボトルや食品トレー、お菓子の袋などのプラスチックが多いことに気づいたそうです。

 谷口さんは、飲料製品の価格に容器のペットボトルやビンの預かり金を上乗せし、回収時に返金するデポジット制度がノルウェーやスウェーデンで導入されていることを学び、「日本にもそういう取り組みがあればごみも少なくなるのでは」と感じました。

 ほかにも、「プラスチック容器をポイ捨てすることが問題と思います。使用しないようにする前に、利用者にポイ捨てをやめるよう徹底することが先」「プラスチック製品の使用企業は、資源ごみとして出すシステムづくりをするべきです」といった意見が届きました。また、消費者の問題意識として、「なるべく使い捨てのモノを使わない、使ったモノはリサイクルを心がけ、ポイ捨ては絶対にしない」という呼びかけもありました。

脱・プラ製ストロー 国内外で

 「プラスチックストローを控えませんか あなたの選択が海を守る」

 東京都新宿区にある損害保険大手「損保ジャパン日本興亜」の社員食堂には、こんなポスターが貼り出されています。

 使い捨てのプラ製ストローを10月16日から廃止。プラ製のカップも紙製にしました。アイスコーヒーを買った人事部の設楽浩司さん(34)は「サステナブル(持続可能)な社会を進めるために使い捨てプラスチックをやめるのは、保険会社らしい取り組みです」と話しています。

 社員食堂でのこうした取り組みは、使い捨てプラスチックの削減を社員を通じて社会に浸透させる狙いもあるといいます。三井住友海上火災保険の社員食堂でも、プラ製のストローとカップを紙製にしました。

 脱プラ製ストローの流れは今年、勢いを増しました。近年、海のプラごみの様々な研究成果や世界経済フォーラムの報告書などの発表が相次いだことを受けて、検討してきた米マクドナルドやコーヒーチェーン世界最大手の米スターバックス、世界展開する外資系ホテルなどグローバル企業の方針が示されたことが大きいです。

 また、米ワシントン州最大のシアトル市は7月から飲食店でのプラ製ストローの提供を禁止。米カリフォルニア州も来年1月から、レストランで客から求められなければプラ製ストローを提供することを禁止します。

 国内でも同様の動きが出ています。外食大手「すかいらーくホールディングス」はガストやバーミヤンなどグループ店舗で、「セブン&アイ・フードシステムズ」はデニーズで、プラ製ストローをドリンクバーに置くのを順次、やめるといいます。

 衣料の買い物袋で、マイバッグが広がるかもしれない動きも出ました。スウェーデンのカジュアル衣料大手「H&M」は12月5日から、日本国内の88店舗で、プラ製買い物袋を廃止し20円の有料紙袋に切り替えると発表しました。持続可能な森林認証FSC認証の紙です。顧客にはマイバッグ持参を求め、20年までに紙袋も半減を目指します。

遅れる日本 やっと規制へ動く

 プラスチックごみによる海洋汚染は世界にまたがる問題です。各国が連携して対応することが必要です。

 6月、カナダで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議で、プラスチックの削減や再利用、リサイクルに数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」が議論されました。しかし日本と米国は署名をしませんでした。国連環境計画の報告書では、1人あたりの使い捨てプラスチックごみの発生量は、米国が世界1位、日本は2位です。上位2カ国が署名しなかったことになります。署名しなかったことについて、日本政府は「国民生活に影響が大きい」などと説明しましたが、国内外で批判が出ました。

 日本政府は、来年6月に日本で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議までに、包括的な戦略「プラスチック資源循環戦略」を策定中です。案では、レジ袋の有料義務化や30年までに使い捨てプラスチック排出量の25%削減を打ち出しています。

 使い捨てプラ削減はこれまでも議論されてきました。スーパーやコンビニエンスストアなどで利用されているレジ袋は、石油が原料のため、ごみとして焼却処分すると二酸化炭素(CO2)が多く出ます。地球温暖化防止の観点から、マイバッグを持参してレジ袋を減らそうと、一部の自治体やスーパーがレジ袋を有料化し、削減を目指してきました。

 レジ袋の有料義務化はプラ循環戦略の目玉の一つですが、国レベルでの有料化は、容器包装リサイクル法の過去2回の見直し議論で検討されたものの、導入に至りませんでした。スーパーが加盟する日本チェーンストア協会は、過去の有料化議論で、削減目標を定めることを提案し、その手段として有料化に賛成してきました。一方、コンビニエンスストアが加盟する日本フランチャイズチェーン協会と百貨店が加盟する日本百貨店協会は、自主的な取り組みを優先するとして有料化に反対してきました。

 今後についてフランチャイズチェーン協会は「プラスチックが地球規模で問題になる中、コンビニ業界のみ反対はできません。国として法律で定めるなら反対しません」とし、百貨店協会は「審議中のことについてコメントはありません」としています。

 海外ではすでに、国レベルでレジ袋の販売や製造を禁止している国が40カ国を超えています。

企業の取り組み 国は後押しを 環境カウンセラー 崎田裕子さん

 これまで、家庭から出るごみを少なくするということを意識してきました。今は別の視点も加わってきました。地球上には75億人が暮らし、天然資源を持続可能に使わないと、将来の世代が暮らしていくには難しいという認識が出てきました。特に欧州の国々が、使い捨てプラスチックへの依存を課題にして、使い捨てではなく持続可能な循環経済を定着させていく、という大きな流れをつくりつつあります。

 国がレジ袋の有料義務化を検討しているのは、とても歓迎することです。2020年東京五輪・パラリンピックには実現させたいですが、プラスチック製品のごみ削減につながる制度づくりには、多くの関係者による議論が必要で、時間がかかります。

 一方で、最近、企業が自主的に積極的な取り組みを始めています。コカ・コーラが2030年までに自分たちが販売した量と同じ量のペットボトルを回収する方針を発表したり、マクドナルドは子ども向けセットのプラスチックおもちゃを店頭回収してトレーに再生したり、食品トレー容器メーカーの「エフピコ」が、長年、使用済みトレーを回収するシステムを自ら作ってリサイクルトレーを作ったりしています。

 国の法整備や制度づくりも進めつつ、企業の積極的な取り組みを後押しすると、早く効果が表れるのではないかと思います。消費者は企業が自主的にしている取り組みに協力できます。国や自治体は後押ししてほしいです。

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 プラスチックが大量生産されて生活の中に浸透するようになって、まだ60年程度しかたっていません。いまでは暮らしの中で欠かせないものになりました。

 ですが、世界で排出されるプラスチックごみは年間3億トン。使い捨てプラスチック製品の中には、必ずしも必要ないものや代替品があります。店が無償提供をやめたり、消費者が断ったりすることで、比較的容易に減らすことができます。

 業界の中で、レジ袋やストローの提供は「サービス」で、他の店が提供しているからやめられない、という考えもあります。ですが、ほとんどのプラ製品の原料は石油で、燃やせばCO2を多く排出します。海へ流れれば海洋ごみとなります。レジ袋やプラ製ストローを配ることは、本当にサービスなのでしょうか。むしろ、地球温暖化や海洋ごみの原因になるものをやめることこそサービスだと思います。(神田明美)

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