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 殺処分など死の瀬戸際まで追い込まれた野良猫や捨て猫が猫好きの客とともにくつろぐ宮崎市の「保護猫カフェ」が10周年を迎えた。血統書付きの「ブランド猫」ではないが、なかには「ぶさかわいい」とインスタグラムで人気者となった猫も生み出した。

 このカフェは宮崎市にある「うたたね」。10月中旬、取材で訪ねた店内。生後3カ月から10歳までの15匹の愛敬たっぷりの姿。メモを取るノートを小さな足で踏みつけ、赤い光がつくICレコーダーを肉球で小突く。足元にすり寄ってくる猫もいて記者も思わず頰が緩む。

 だがこの猫たちは一時は路頭をさまよい命の危険さえあった。そんな猫を救ったのは「うたたね」代表の橋本智子さん(49)だ。

 運営の手伝いをしたフォトエッセイストの児玉小枝さんの県内であった写真展。保健所で殺処分を待ち、檻(おり)の中から静かにカメラを見つめる猫の姿に胸が痛んだ。「こんな悲しいことが行われているなんて」

 まもなく保健所などから引きとった猫の保護を自宅で始めた。2008年ごろ、東京などではやり始めたのがお茶をしながら猫とじゃれ合える猫カフェ。ただその多くは血統書付きの「ブランド猫」だった。

 「保護猫でカフェを開いたらどうだろう。猫好きの人が集まってくれ、飼い主が見つけられれば」。橋本さんは交流を深めることで客も猫も癒やされるカフェを思いついた。店名の「うたたね」は人も猫もゆっくりくつろげる空間づくりへの願いを込めた。

 いまでは口コミなどで評判が広がり月600人が訪れるまでになった。この10年間で約280匹の猫が新しい飼い主を見つけた。引き取り手が見つからない古参の猫たちは店で面倒を見続けている。

 「うたたね」は「スター猫」も輩出した。目元に黒いくま取りのような模様がある「歌舞伎」。元々は店の前で檻の中に入れられて、ほかの5匹と一緒に捨てられていた。

 「不細工な顔で売れ残ってしまう」。橋本さんは心配したが、従業員がその顔が歌舞伎役者のようにも見える、と名付けると「ぶさかわ(いい)」猫としてSNSでじわじわと人気者に。今の飼い主が約2年前に開設したインスタグラム(kabuki2929)でのフォロワーは6千人に迫る勢いだ。

 「うたたね」は新たな保護猫を生み出さない取り組みも徹底する。飼育を希望する人には事前に居住環境などのアンケートを実施。猫の寿命の15~20年間、転勤や結婚など環境の変化で猫を手放してしまうことがないかを見極めるためという。

 「うたたね」にはこれまでに約7万人が来店したという。橋本さんは「保護猫たちが東京ドームにも入りきらないような人を集めたんです」とひざ元の猫を優しくなでる。そしてこう続ける。「保護猫がいなくなって、いつか役目を終えるのが目標です」

 営業時間は午前11時~午後6時。料金はワンドリンク付きで30分600円から。問い合わせは同店(0985・53・2922)へ。(松本真弥)