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 ドイツで難民排斥を掲げる政党が勢力を伸ばし、ブラジルでは軍事政権を賛美する人物が大統領選を制した。中間選挙があった米国ではトランプ大統領がメディアを執拗(しつよう)に攻撃した。民主的な選挙がポピュリズム(大衆迎合政治)という怪物を生み、民主主義を窒息させる。世界中に蔓延(まんえん)する現象をどう読み解けばいいのか。

 ――ポピュリズムが世界中で民主主義を脅かしています。

 「実態はその逆です。民主主義が信頼を失っているから、ポピュリズムがのさばるのです」

 ――市民の意識が変わったことがこの状況を作り出しているのですか。

 「その兆候は先進国では20年以上も前からありました。投票率の低下や、政党・政治団体に所属する若者の減少、議会の信頼の失墜など。米国では1970年代には4割以上だった米連邦議会への信頼度が2014年になんと7%です」

 「多くの学者は長らく、それはその時の政治の問題で、民主主義そのものへの市民の支持は揺らいでいないと楽観していました。しかし現実はもっと深刻です」

 ――市民が民主主義の価値観に背を向けている、と。

 「そうです。例えば米国では1930年代生まれの7割が『民主主義の社会で暮らすことが重要』と答えていますが、80年代生まれは3割。『(議会や選挙を軽視する)強権指導者でも構わない』と答えた18~24歳は95年の調査では34%でしたが、2011年には44%に増えました。軍事政権を許容する米国人は95年には16人に1人でしたが、11年は6人に1人。数は少ないですが、伸びは大きい。同じ傾向は英国やオランダ、スウェーデンなどでも見られ、その後も加速しています」

 ――今の民主主義のどこに問題があるのでしょうか。

 「その前に『リベラルな民主主義』というものを整理しておきましょう。まずはリベラリズム(自由主義)。本来、個人が自由、自律的に決めることができる権利のことです。何を話すか、どの宗教を信じるかなど市民一人ひとりが自由に選択できる。そこには少数者の権利も含まれます。たとえ大統領でも『あいつの主張は気にくわないから牢屋に入れろ』とは言えません。もう一つがデモクラシー(民主主義)。『自分たちのことは自分たちで決める』という共同による自己統治の原則です。絶対君主や独裁者、宗教指導者に『こうせよ』と指示されないということです」

 「私が懸念するのは、近年、この二つの原則が分離してきていることです。通りいっぺんの自由は保障されているものの、『自分たちが決める』という原則が損なわれています。私は『非民主的なリベラリズム』と呼んでいます」

 ――確かに選挙で選ばれていない官僚らエリートへの反発は、世界各地で強まっています。

 「第2次世界大戦後、高度な技術の進展、経済政策における金融政策の比重の高まり、地球温暖化など国家をまたぐ課題が顕著になっています。それに伴い、物事を決める力が各国の議会から官僚組織や中央銀行に、さらには国際機関へと移ってきたのです」

 「各国の政治のありようにも問題があることを忘れてはなりません。銃規制に反対する全米ライフル協会のように、一部の利益を代表する団体やロビイストの影響力が強まり、市民は無力感を募らせています。政治にますますカネがかかる現実がその根底にあります」

■民主主義国家で暮らす価…

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