[PR]

 「コンクールに応募する小説を見てほしい」

 宮崎市の山田健二さん(34)は7月、自身のSNSに寄せられた依頼を引き受け、市の施設で女性と待ち合わせた。

 原稿用紙約30枚を受け取り、読み始めた。ところがすぐに不安になって、目の前に座る女性に視線を戻して打ち明けた。

 「実は私、これまで一冊も本を読めたことがないんです」

 驚く女性に山田さんは続けた。「今日はチャレンジしたくて来たんです。こんな私ですが、読んでいいですか」

 子どものころから長い文章を読むのが苦手だった。一文ごとの意味はわかるのに、前後がうまくつながらない。音を耳で聞けば理解できるけれど、字面を目で追うとわからなくなる。臨床心理士からは「学習障害の一種の失読症ではないか」と言われた。

 テレビドラマや映画が好きで、「小説の世界に浸ってみたい」とずっと思ってきた。もう一度、手元の原稿用紙に目を落とした。

 ふだんは段落の最初の一文や、カギ括弧だけを読んでいって大まかな意味をつかむ。でも、今回はしっかり内容を理解したいと思ったから、そのクセが出ないよう一文ずつ追った。

 読み終えると、女性に「早いですね」と言われた。途中からいつものように、ページをただめくるだけになっていた。

 また1枚目から原稿用紙の束を繰った。

 2回目。

 登場人物がわかった。

 3…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら