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 断続的な噴火が続く口永良部(くちのえらぶ)島(鹿児島県屋久島町)で、約130年の歴史を持つ「西の湯温泉」が9月末、台風24号の高波と強風で跡形も無く壊れた。島民が石を積み上げ、幾多の台風にも耐えてきた浴槽は崩れ、建屋は吹き飛ばされた。「憩いの場を再び」。島民は来夏を目指し、再建することを決めた。

 屋久島から西に約12キロ離れた、100人ほどが住む火山島。温泉を管理する本村地区の貴舩森区長(46)によると、1886(明治19)年、島を訪れた僧侶が島北部の海沿いの崖の割れ目からわき出る源泉を見つけたのが始まりだったという。島民は、約100キロ離れた本土の同県指宿市からも船で石を運び、ブロック状に削り、溶岩とこすり合わせて表面を平らにした。その石を積んで湯船をつくり、囲いと屋根もしつらえ、海を望む温泉になった。

 仕事を終えた島の農家や漁師、お年寄りだけでなく、観光客も楽しんでいたが、9月30日に島に最接近した台風24号の影響で崩れた。消防団員から知らせを受けて、現場に駆けつけた貴舩さんは「130年守ってきた温泉が、一瞬でなくなるなんて」と立ち尽くした。

 これまでも、台風で囲いや屋根が吹き飛んだり、漂着したゴミで湯船が埋まったりしたことはあったが、湯船自体が壊れたことはなかった。救いは、なお、岩の割れ目から源泉がわき出していたことだった。

 10月15日、地区の役員10人が集まった。「時間がかかっても憩いの場を再建したい」「観光の目玉がなくなる」という声が相次ぎ、再建することが決まった。地区の積立金を切り崩して、復旧費に充てる方針だ。強風の日が多く工事が難しい冬場を避け、観光シーズンに間に合うよう来夏の完成を目指す。

 貴舩さんは「島民にとっても観光客にとっても癒やしの場。素朴な元の姿に戻したい。火山島の宝ですから」と話した。(加藤美帆)