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【アピタル+】患者を生きる・胃を切って(胃切除手術の後遺症)

 胃がんは検査や治療の進歩で「治る病気」になってきました。ただ、手術で胃を切りとると、様々な後遺症が起きます。どんなことに注意すべきなのか、「胃を切った人友の会 アルファ・クラブ」の会長を務める青木照明医師=汐留みらいクリニック(東京都港区)に聞きました。

 ――胃がんの後遺症対策で大切なこととは何ですか。

 胃がんが重病であるという意識が薄れてきた結果、後遺症と手術を関連づけにくくなってきています。つまり、いろいろな後遺症の名前は知っていても、様々な時期に起こる不快感や胃腸の症状、栄養障害と、胃を切った手術のことが結びつかず、「病識(自分が病気であるという自覚)」が患者さんに発生しないのです。このため、きちんとしかるべき治療を受けられず「医療難民」になってしまう可能性があります。

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 とにかく、胃切除をされた患者さんは胃がないことを意識し、食生活や薬の使い方、栄養が足りない場合は栄養剤や注射などに気をつけないと、栄養失調になってしまうおそれがあります。

 ――胃を切りとると、どんなことが起きますか。

 まず困るのは、食欲がなくなることです。1999年に日本の研究チームがホルモンの一種「グレリン」を発見しました。このホルモンは主に胃から分泌されており、食欲を刺激したり、脳下垂体に作用して成長ホルモンの分泌を促したりすることがわかりました。手術で胃がなくなると、グレリンが減って食欲がなくなったり、筋肉が減ったりします。その結果、体重も減ります。

 ――連載に登場した患者さんは手術後、ものを食べると腹痛に悩まされました。

 胃がなくなり、食後に食べた物が腸に急に流れ込むために起きる「ダンピング症候群」の一つでしょう。様々な症状があり、主な症状はめまい、倦怠感(けんたいかん)、頭痛、どうき、しびれなどです。吐き気や腹痛、下痢などの腹部症状が起きる場合もあります。

 血糖値も乱高下します。食物がすぐ腸に流れ込んで吸収されるため、一時的に高血糖になります。すると血糖値を下げようと膵臓(すいぞう)からインスリンというホルモンがたくさん分泌され、食後2~3時間すると今度は低血糖になります。眠気や倦怠感、冷や汗などがあります。重い場合は意識がもうろうとすることもあります。

 ――胃を切ったあと、時間がたってから起きる後遺症もあるのですか。

 手術後5、6年してから貧血が起きることがあります。胃を切ると血液の材料になる鉄やたんぱく質、血液をつくるのを助けるビタミンB12がうまく吸収できなくなります。こうした栄養分は普段から体に蓄えられているのですが、蓄えがなくなると貧血が起きます。

 また10年、20年たってから「栄養失調」のいろいろな症状が顕在化してきます。

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・食べる>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・小堀龍之)