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 障害があっても、風を切って走りたい――。病気で四肢まひを抱える山口市の山口南総合支援学校高等部1年、春名翔弥さん(15)が、4日に山口県下関市である下関海響マラソンに初出場する。2キロのファンランに足こぎ車いすで挑戦し、完走をめざす。

 10月末、春名さんが両足でペダルをこぎ、懸命に車いすをこいでいた。山口市のトレーニング施設から自宅までの約700メートルの道のりを、人が歩くのと同じぐらいのスピードで走り抜けた。目標は500メートルを18分以内に走ることだが、この日は8分42秒。春名さんは「余裕ですね。いけます」とにっこりと笑った。

 四肢まひとなったのは11歳のとき。脳出血で突如倒れ、目が覚めると病室のベッドに寝ていた。どこにいるのか分からず、ふと気づくと足が動かなかった。医者からは、再び歩けるようになるとしても20年はかかる、と言われた。

 病気になる前はグラウンドを駆け回るサッカー少年。「何で俺だけ」と当初は四肢まひになった事実が受け入れられず、悔しくて涙が止まらなかった。

 周囲の人に支えられながら懸命にリハビリに励み、「一生寝たきりになるかもしれない」と言われた状態から少しずつ回復。車いすで生活できるようになった。好奇心旺盛な性格で、大豆の入った袋を投げて距離を競うパラスポーツなどにも意欲的に参加した。

 2017年1月からは、最先端のロボットを使った歩行トレーニングができるやまぐちロボサポートセンター(山口市小郡黄金町)に通う。今年5月にセンターの山本喜代人社長からマラソンへの参加を提案されると、翌日には「やります」と返事をした。

 10月から週1回、トレーニングを開始。大会で使う足こぎ車いすは、歩く動作に近く、普段とは違う筋肉を使うため走行が難しい。それでも自分の足で動いている感覚は久々で、「風を切るように走るのが面白い」と満足げだ。毎回90分間、懸命にトレーニングに取り組んできた。

 大会で伴走者を務めるセンターのトレーナー、渡辺裕貴さん(28)は「何にでも挑戦しようとする気持ちが強い」と話す。時には、渡辺さんが心配になるほど、トレーニングにのめり込むこともあるという。

 家族やトレーナーに支えられて挑む初めてのマラソン。「楽しみながら最後まで走りきりたい」と完走をめざしてスタートラインに立つ。

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(金子和史)