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 韓国で2014年に修学旅行中の高校生ら約300人が死亡した旅客船セウォル号の沈没事故で、当時の軍情報機関が世論の沈静化を狙い、遺族や同級生らの監視や運航会社オーナーへの盗聴を行っていた。韓国軍特別捜査団が6日、発表した。捜査団は拘束していた3人を職権乱用などの罪で起訴し、ほかの2人も在宅起訴した。

 遺族らを監視していたのは、今年8月に解体された軍情報機関、機務司令部。集めた情報は朴槿恵(パククネ)前政権当時の大統領府に報告していたという。

 同司令部は事件直後、当時の朴政権の支持急落を避けるために対策班を結成。事故の沈静化には行方不明者の捜索や船体の引き揚げ作業を打ち切る必要があると考え、遺族らの説得や圧力をかけるのに役立つ情報収集を始めた。

 光州(クァンジュ)と全羅南道(チョルラナムド)を担当する第610部隊は関係者に偽装し、遺族らが集まる現場近くの体育館に紛れ込み、事件への思いなどを情報収集。京畿道安山(キョンギドアンサン)地域担当の第310部隊は、死亡した生徒らが通った安山市の檀園(タンウォン)高校の同級生や父母らについて、政治思想などの情報を集めていた。

 また、セウォル号運航会社の実質的なオーナー兪炳彦(ユビョンオン)氏を検挙するため、同氏への盗聴を実施。対策班で盗聴は違法行為にあたるとの指摘も出たが、無視されたという。同氏は事件後、変死体で見つかった。

 機務司令部は今年、朴前政権を巡る政情不安に備えて戒厳令を検討していた疑惑が浮上し、文在寅(ムンジェイン)政権が8月に組織の解体を決めた。(ソウル=牧野愛博)