「勝利がヘイト生んではならない」乱射の街に芽吹く結束
米ペンシルベニア州ピッツバーグで10月27日、シナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)であった銃撃で、11人が殺害された。トランプ大統領の排外主義的な言動が米社会の分断を生んだからだといった批判があがった。人々はどのような思いで一票を投じたのか。米中間選挙のあった11月6日、街を訪れた。
「ヘイトより強くあろう」。こう記した標語が目についた。礼拝所に最も近い投票所を探すと、消防署の一角に設けられていた。
「投票をする時、涙がこみ上げてきた。かつてないほど大事な選挙だと思った」。インテリアデザイナーのデブラ・ペイコーさん(64)は言葉に力を込めた。
「ここで起きた悲劇に本当に対応してくれる政治家が必要なのだ」。ユダヤ系ではない。だが「礼拝所だけでなく、地域社会が攻撃されたのだ」と感じている。
デブラさんは「議会が変わることで、少しでも傷が癒えることを願っている」と語る。夫のジーンさん(67)は「人々はトランプ氏の憎悪や分断をあおるやり方に我慢ができなくなってきている」と話す。夫妻は「結束が大事だ」とし、「私たちは(人種や宗教が)違うということで恐れはしない」と語った。
トランプ氏は一昨年の大統領選から一貫して「対立」や「憎悪」「恐怖」をあおり、支持につなげる政治手法をとってきた。移民を敵視し、犯罪者やテロと結びつけ、批判的なメディアは「人民の敵」とまで言った。多様化を嫌う白人保守層の歓心を買う一方で、社会の寛容性は失われていった。
それが中間選挙直前に暴力となって噴き出した。礼拝所の乱射事件の直前にも、トランプ氏を熱狂的に支持する男がトランプ氏に批判的な政治家やメディアに爆発物を送りつけたとして逮捕された。異常な状況での選挙だった。
選挙で米国の分断は解消され…