[PR]

 便利な一方で、深刻な事故につながるリスクもある「子ども乗せ自転車」。朝日新聞デジタルのアンケートには、ヒヤリとした経験や、生活に欠かせない事情など切実な声が寄せられました。一方、利用者のマナーを問題視する声もありました。当事者目線で活動を続ける人や、関連メーカーの声を紹介し、安全のためにできることを考えます。

抱っこ メーカー想定外

 子どもを「抱っこ」しての自転車運転はルール上、認められていません。抱っこひものメーカーも、抱っこしながら自転車に乗らないように呼びかけています。

 米国の人気ブランド「エルゴベビー」を輸入販売する国内正規総代理店「ダッドウェイ」(横浜市)の担当者によると、そもそも抱っこひもは「自転車に乗ることを想定して開発されていない」といいます。そのため取り扱い説明書では、使用中に自転車に乗らないよう「警告」しており、守らないと「死亡や重傷を負うおそれがある」としています。約40のメーカーや輸入代理店でつくる抱っこひも安全協議会も「自転車は転倒しやすく危険。抱っこであれおんぶであれ、自転車運転の際は使わないでほしい」と呼びかけています。

 ただ、中古の抱っこひもをネットやリサイクル店などで買うと、説明書がなく、そうした注意が利用者に届かないこともあります。日本語の説明書がない並行輸入品も。そこで協議会は、各メーカーの日本語の説明書をホームページに掲載し、ダウンロードできるようにする準備を進めています。

 ヘルメットにも注意が必要です。2008年の改正道路交通法施行で、幼児を自転車に乗せて運転する場合はヘルメットをかぶらせることが保護者の努力義務になりました。しかし、一定の基準をクリアしていることを証明する「SGマーク」を手がける一般財団法人・製品安全協会では、マークを交付するヘルメットの対象年齢は「1歳以上」としています。担当者は「ヘルメットをかぶせて自転車に乗せた時に、子ども自身が十分な保持姿勢を保てるのが1歳以上のため」と説明します。

 国内大手メーカー「オージーケーカブト」(大阪府東大阪市)によると、ヘルメットは温度差が少ない室内で保管して、3年を目安に買い替えを検討するとよいといいます。また、一度大きな衝撃を受けたヘルメットは衝撃吸収材がつぶれてしまうため、見た目が変わらなくても使い続けるのは危険です。

 ヘルメットを選ぶ際は、子どもの頭の大きさに合うものを選ぶことが大切だといいます。「成長を見越して大きめのサイズを買う保護者もいますが、隙間があると衝撃を吸収しづらくなります」と担当者。横から見た時にヘルメットの縁がまっすぐになるよう深めにかぶり、あごひもは指1本が入る程度まできつく締めるといいそうです。(野村杏実)

どう乗れば?当事者も模索

 「ルールやマナーの周知と、自転車の走りやすい道路環境の両方が必要だと伝えたい」。フォーラム面あてに、こんなメールが届きました。「ぼちぼち自転車くらぶ」の名で3年前、「おやこで自転車はじめてブック――子乗せで走る、こどもに教える」(子どもの未来社)を出した東京都練馬区の編集者、やまがなおこさん(51)です。

 10年前に長男が誕生。生後数カ月から自転車で通園するようになり、「歩道は走りづらいし車道も怖い。どこを走ればいいの?」と戸惑った経験から、安全な乗り方についてさまざまな専門家から話を聞いたといいます。どの専門家も口をそろえたのは「赤ちゃんを抱っこして乗るのは、安全上ありえない」ということ。また、おんぶする場合も「“carry”ではなく“wear”、子どもを『運ぶ』のではなく『身につける』つもりで体に密着させることが大事」ということが、特に印象的だったといいます。

 「車道を走る時はもちろん、歩道を走る際も、車の進行方向と同じになるよう道の左側を走る。正面から来た自転車をよける場合も、左にハンドルを切る。これを意識するだけでも『危ない』と思うことがだいぶ減った」そうです。

 昨年5月、自転車専用道路の整備などを重点項目とする「自転車活用推進法」が施行され、自治体は地域の実情に応じて、自転車活用推進計画をつくる努力義務が課されました。やまがさんは「ここの道が走りづらい、怖い、と感じたら、メール1本でもいいので自治体に声を届けることも大切。子ども乗せ自転車の時期を卒業しても、子どもが1人で自転車に乗って安全か、自分が杖をつくようになっても安心して歩けるかと想像してほしい」と話します。

 女性起業家たちのネットワーク「PowerWomenプロジェクト」を主宰する、さいたま市の宮本直美さん(42)も、2013年に川崎市で起きた子ども乗せ自転車での死亡事故をきっかけに、当事者目線で安全対策を広める「おやこじてんしゃプロジェクト」を立ち上げました。仲間の女性たちと月に数回、親子が集まるイベントで話をしたり、注意点をまとめた冊子を配ったりしています。

 宮本さんが強調するのは「目的地に30分早く着く、くらいのゆとりをもつ」こと。「事故は急いでいる時に起きやすい。移動のためというより、親子で会話や景色を楽しむ時間と考え、多少遠回りでも、より安全な道を通れる時間的な余裕をもってほしい」と話します。「そのためには、家事や育児の負担が母親だけにかかりすぎないよう家庭内での分担を見直したり、第三者の手を借りやすい環境を整えたりすることも必要です」

 「かかりつけ」の自転車屋さんをもち、最低でも年に一度は点検してもらうなど、メンテナンスの大切さも呼びかけています。(三島あずさ)

歩行者「怖い」 環境整えて

 アンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

●「子ども2人と一緒に移動するには、電動自転車は欠かせない上、坂が多い地域なので必須。車道にはいつも路上駐車があって道路の真ん中近くを走らなければならず、とても怖い。かといって歩道は狭いし、歩行者に嫌みを言われることも。保育園のお母さんはとにかく時間がない。子どもは予期せぬことが多くて予定が狂いやすく毎朝が戦い。時間に追われる。2人の子どもの保育園が遠く離れていた1年間は特につらかった。自転車以外の手段がなく、雨の日も自転車。あまりの酷使で自転車がパンクしたときは、しばらく朝はタクシー、帰りは歩き。2園の距離は、バギーを押しながら歩いて40分も。道も保育園も、環境を整えてほしい。切実な願い」(東京都・40代女性)

●「自転車屋です。母親+子×2+車両=100キロになるモノを歩道で時速15キロで走らせている怖さを残念ながら多くの方が理解していないように感じます。また電動アシスト車は空気圧が低下しても車輪がゆがんでいても油が足りなくてもグイグイと走ってしまうので修理に持ち込むころには部品交換に至ることが常で修理に要する時間と費用をお伝えすると『明日乗れないと困る』『高い(金額)』など責められます。多くの方は量販店や通販で購入し運転マナーや定期点検・空気補充の重要性など説明を受けていないようです。子乗せに限らず『チャリンコ』意識を変える啓蒙(けいもう)活動を業界×警察×マスコミなどが地道に愚直に徹底的に行ってほしいと願います」(茨城県・50代男性)

●「私は歩行者です。今回の意見で自転車にこどもを乗せるのがいかに大変かというトーンが多いのですが、歩行者にとって夕方から夜のスーパーのそばをこどもをのせて歩道をスラロームのように歩行者をよけて運転したり、歩行者が退くのがあたりまえのように運転する“ままちゃり”ほど怖いものはありません。歩道は歩行者優先なのは法律と認識していますが、子育て中のママ(ときにはパパ)にはそのような論理は通じず、自分は急いでいる、子育てが大変なんだ、ということのようです。昔と比較すると歩道を自転車が走ることでこどもの手をひいて歩くことが危険になっているので、自転車に乗せる、という悪循環もあると思います」(東京都・50代その他)

●「交通手段が自転車しかないお母さんにとっては致し方ないのかもしれないけれど、自転車の前後に子どもたちを乗せてかつ抱っこなりおんぶをして自転車を運転するのは危険すぎると思います。仕事ももちろん大切ですが、子どもの命とどちらが大切か。会社に託児所があるのが一番の理想だと思います。会社にあれば出社時間だけを考えればいいし、会社も出勤時間の枠を広げてあげれば親も子どもをせき立てて慌てて出勤することがないと思います。隠れ保育士さんがたくさんいると思うんですけどね」(神奈川県・40代女性)

●「長い坂道を下り、横断歩道を渡ろうとUターンに近い形で曲がる時に、バランスを崩し転倒。運転者(自身)が膝蓋骨(しつがいこつ)を骨折。後部座席の子供はシートベルトとヘルメットを着用していたため、けがはありませんでしたが、幼児座席の側面には地面を擦ったための長い傷がついていました。発進時でスピードはほぼ出ていませんでしたが、もし装着していなかったら、子供が自転車から飛びだしていたと思います。短い距離でも、シートベルト&ヘルメットは必須。朝の登園時にかなり急いで走る方も見受けますが、転倒などがあった時、大人より子供に危険が大きいことを考え、自分自身も今後も気をつけたいと思っています。」(東京都・40代女性)

●「私はおんぶが苦手で、子供をおんぶして自転車に乗るとバランスを取りにくく危険でした。抱っこで乗った方がずっと楽で安全でした。なので、抱っこで乗るのが違法なのは腑(ふ)に落ちません。抱っこやおんぶの時期の子がかぶれるヘルメットを欲しいととても思いましたが、そういったものはなく、海外の転倒防止用の帽子を使いました。子供が小さい時期には自転車はなくてはならない移動手段です。あれはダメこれはダメと言われても、ではどうすればいいのでしょうか。子供が2人3人いればなおさら、日常生活において、徒歩や公共交通機関での移動はとてもつらいです」(東京都・40代女性)

●「地方だと車で移動が当たり前で、東京に来て、こんなにも自転車が移動手段だとは驚きでした。中には1人おんぶ、前と後ろに乗せて4人乗りも見かけたことがあり、たくましいと感心する半面、とても危険な行為だと不安も感じます。少子化が進むなか、こうしたケースはまれなのかもしれませんが、子育て環境が少しでも安心安全な社会となるように、みなさんが興味をもつといいなと思います」(東京都・40代女性)

     ◇

アンケート「子ども乗せ自転車、どうすれば?」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

こんなニュースも