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 新進気鋭の5人の監督によるオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」が公開されている。テーマは「10年後の日本」。高齢化、AI(人工知能)、デジタル社会、原発、徴兵制を手がかりとして5本の短編に描かれた日本の近未来像は、非寛容で硬直した管理社会ばかりだ。AIをとりあげた木下雄介監督(37)に、その意図を聞いた。

 本作は、2015年に香港でつくられ、現地で大ヒットした自主映画「十年 Ten Years」の日本版にあたる。

 香港の「十年」も、「10年後の香港」をテーマに5人の若手監督が競作したオムニバス作品で、北京政府の統制が強まる圧迫感で息が詰まりそうになる未来図だった。この作品の成功に刺激され、タイ、台湾、日本で、それぞれの「十年」を製作する国際プロジェクトが立ち上げられた。日本版は、是枝裕和監督がエグゼクティブプロデューサーをつとめている。

 木下監督の短編のタイトルは「いたずら同盟」。人知を超えるほどの発達を遂げたAIが道徳教育を管理する小学校が舞台だ。AIは、子どもたちが少しでも言いつけに背くと、耐えがたいノイズを脳内に送りこんで痛めつける。そんななか、ある少年が同級生を巻き込んでAIに逆襲する「いたずら」を画策する。

 木下監督は去年、長男を授かり、初めて親となった。「だから、迷うことなく主人公は10歳の男の子。もうひとつ、道徳が義務教育で正式な教科になり、検定教科書が使われるようになることに疑念をぬぐえなかったことが、脚本の構想の糸口になりました」

 キリスト教圏のような絶対神のいない日本では、AIを、それに代わる万能の理性のように思いこみ、信頼しきって身をゆだねてしまうのではないかと想像する。「そうなると、AIに管理されたシステムと完全に決別する物語は現実的ではなくなる。システムから逃れられないことを自覚しながらも、人間としての多様性を失わない方法論を提起したつもりです」

 他の4本は、「PLAN75」(早川千絵監督)、「DATA」(津野愛(めぐみ)監督)、「その空気は見えない」(藤村明世監督)、「美しい国」(石川慶監督)。(保科龍朗)