山口県岩国市在住の吉永恵さん(24)が少女漫画雑誌の新人賞を受賞した。中学校入学後に原因不明の難病と診断され、今も闘病生活が続く。県立山口高校通信制を卒業後、漫画を本格的に描き始めて半年余り。プロデビューをめざし、創作に励んでいる。
吉永さんは岩国市で生まれ育った。小学生のころは体を動かすことが好きで、看護師になるのが夢だった。中学校に入ってすぐ、消化管に炎症が起きるクローン病と診断された。
中学在学中は腹痛がひどく、眠れない日々が続いて学校に通うことができなくなった。食事も制限され、お米や好きだったケーキも禁止された。日常生活がままならず、「頑張ってもどうせ無駄なんだろうな」と気持ちが暗くなった。高校は、自分のペースで学習を進めることができる通信制に入った。
高校時代も体調を崩して入退院を繰り返したが、漫画を読んでは、登場人物が困難な状況に立ち向かう姿に勇気づけられた。できないことがあると、病気のせいにする自分を反省した。
絵を描くことは好きだった。2016年にあった県内のポスターコンクールで最優秀賞に輝いた。そのことを高校で生徒の相談窓口役だった久原(くはら)弘教諭(59)と話している時、漫画を描くことを勧められた。
高校は昨年3月に卒業。今年の夏、少女漫画雑誌「LaLa」などを出版する白泉社の「ララまんが家スカウトコース」に応募した。「読者を驚かせようという気概が感じられた」として、応募総数26点の中から、新人賞にあたる「ベストルーキー賞」に選ばれた。
受賞作は「後ろのユウコさん」。女子高校生の幽霊と男子高校生が出会う1話完結の物語だ。幽霊が出てくる漫画を読んでいて、怖くない幽霊の話は面白いかもしれない、と描き始めたという。
色塗りや描き直しがしやすいタブレット端末で作業し、妹や友だちに読んでもらった。分かりにくい表現がないように注意しながら、1カ月がかりで描き上げた。
想像を裏切るような展開になるよう意識した。「びっくりした、という反応がうれしい」と吉永さん。映画化された人気漫画「夏目友人帳」の作者、緑川ゆきさんがデビューした隔月刊の「LaLa DX」11月号に「白井杏花(きょうか)」のペンネームで掲載された。
いま、体調のいい日には3時間ほど制作に取り組んでいる。「輝かしい結果を出していなくても、一生懸命生きている人を描きたい。漫画を通して、しんどい思いを抱えている人の気持ちが少しでも楽になればうれしい」と話している。(藤牧幸一)
小腸や大腸をはじめとする消化管で慢性の炎症や潰瘍(かいよう)が起きる国指定の難病。若い世代の発症が多く、腹痛や下痢、全身のだるさなどの症状がある。根本的な治療法は確立されていない。厚生労働省によると、2017年度末時点で国内では約4万人がクローン病と診断され、医療費助成を受けている。
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