[PR]

 元慰安婦の証言を伝える記事を「捏造(ねつぞう)」と断定され名誉を傷つけられたとして、元朝日新聞記者で「週刊金曜日」発行人兼社長の植村隆氏がジャーナリストの櫻井よしこ氏や出版3社に損害賠償などを求めた訴訟の判決が9日、札幌地裁であった。岡山忠広裁判長は請求をいずれも棄却した。植村氏は控訴する方針。

 植村氏は1991年、韓国人元慰安婦の金学順(キムハクスン)さんの証言を取材。記事は8月と12月、朝日新聞に掲載された。この記事に対し櫻井氏は2014年に月刊誌「WiLL」4月号で「植村記者が真実を隠して捏造記事を報じた」と指摘。「週刊新潮」「週刊ダイヤモンド」誌上でも植村氏の記事を「捏造」と断定する論文やコラムを書いた。

 植村氏は、教授として就職が内定していた神戸松蔭女子学院大(神戸市)の雇用契約を解除せざるを得なくなり、非常勤講師を務めていた北星学園大(札幌市)や家族に非難や脅迫が集中した。これらの被害は櫻井氏の文章により名誉を傷つけられたためだとして、植村氏が15年2月に提訴。櫻井氏と3誌を発行するワック、新潮社、ダイヤモンド社を相手取り、損害賠償計1650万円の支払いなどを求めていた。

 岡山裁判長は判決で、櫻井氏の論文などが植村氏の社会的評価を「低下させた」と認めた。一方で、櫻井氏が他の新聞記事や論文などから、植村氏の記事は事実と異なると信じたことには「相当の理由がある」などと結論づけた。

 裁判では、櫻井氏が植村氏を批判した論文の誤りを認めて訂正する場面もあった。櫻井氏は論文で、金さんが日本政府を相手どり訴えた訴訟に触れた際、実際は訴状にないことを、訴状からの引用として紹介したと指摘されていた。(編集委員・北野隆一