[PR]

 抗菌薬(抗生物質)が効かない耐性菌の広がりを防ぐため、国は豚や牛など家畜の飼料に混ぜて使う2種類の抗菌薬の成長目的での使用を初めて禁止した。多用して家畜の体内に耐性菌ができれば、食品や排泄(はいせつ)物を通じて人にも広がる恐れがあると判断した。人への治療で「最後の切り札」の一つとされる薬が含まれる。ほかの薬への評価も進め、適正使用を促す方針という。

 家畜に対し抗菌薬は、病気予防に加え、成長を促す添加物として多用されてきた。腸内環境を整えるとされ、狭い場所で効率よく飼育できるからだ。添加物として2016年は国内で228トンが使われた。

 今回禁止された薬は、コリスチンとバージニアマイシン。コリスチンは国内に流通する飼料添加物の約1割を占め、耐性菌に感染した人の治療では近年「切り札」と位置づけられている。主に豚への乱用で、15年以降にコリスチンに耐性のある大腸菌が豚や人で見つかり、コリスチンすら効かない耐性菌が現れる懸念が広がっていた。1970年代から使用されていたバージニアマイシンは近年は流通実態がない。家畜や生肉に触れるほか、火をよく通さずに肉を食べることでも耐性菌感染の恐れはある。

 耐性菌の広がりは世界的な問題だ。厚生労働省によると、13年時点で耐性菌による死者は世界で年に70万人を超す。放置すれば、50年には死者が年1千万人に上るという推計もある。欧州連合(EU)は06年、成長促進目的での抗菌薬の使用を禁止。世界保健機関(WHO)も昨年、抗菌薬を家畜の成長促進目的に使わないよう求める指針を発表した。

 国内では内閣府食品安全委員会が16~17年、2薬を飼料添加物に使うと、「家畜の体内で耐性菌ができ人の治療に影響する可能性がある」と評価した。農林水産省は昨年3月、食品安全委が「人へのリスクなし」と評価した薬以外は原則、家畜の成長促進に使えなくする方針を決定。農水省が今年7月、飼料添加物としての2薬の使用を禁止した。国は、感染症を防ぐワクチンや代替となる飼料添加物の開発を図る方針だ。農水省によると、飼料添加物として認められている抗菌薬は23成分。うち15成分は「リスクは無視できる」などと評価されたが、8成分は評価中という。

 耐性菌問題に詳しい、富田治芳・群馬大教授は「世界的に菌の耐性化が進む一方、企業にとって利益の上がりにくい抗菌薬の開発は停滞している。不要な抗菌薬の使用は避けるべきだ」と話している。(黒田壮吉)