[PR]

 高齢化に伴う医療費の増加を抑える対策の一つとして、厚生労働省は個人の医療情報を病院が変わっても確認できる「医療等ID」の2020年度の本格運用を目指している。オランダでは、こうしたICT(情報通信技術)を活用した医療の効率化に先行して取り組み、その動きを加速させている。現状を取材した。

 首都アムステルダムで家庭医をしているバート・メイマンさんの診療所。現代美術の絵画が飾られたくつろいだ雰囲気の診察室で、机に置かれたパソコンをみて、「今はこれを通して、病院での検査の結果や薬局での薬に関する情報を見ることができる」と話した。

 オランダの医療制度は家庭医が中心だ。病気になるとまず、登録している地域の家庭医で診察を受ける。専門の治療が必要だと診断されると専門医を紹介され、病院で治療を受ける。

 その際に活用されているのが、家庭医、病院、薬局などみんなが診療録(カルテ)や薬の処方箋(せん)などの情報をパソコンで見られるネットワークだ。X線検査の放射線被曝(ひばく)や複数の薬の服薬による副作用などが指摘される中、不必要な検査や大量の薬の投与を防ぐ。

 オランダは早くから電子カルテの導入を進めていたが、その取り組みを加速させたきっかけは国の財政悪化だ。12、13年にマイナス成長に陥り、13年に即位したウィレム・アレキサンダー国王は議会で「20世紀型の福祉国家は終わった」と演説。国民の自助努力を促す参加型社会をめざすとした。

 その柱の一つが、医療情報のネットワーク化だった。ただ、過去に医療情報を国の主導で管理することに対して、プライバシー保護の観点から反対の声が上がり、同様の計画が頓挫した経緯があった。

 このため、新たな計画では、民間組織を設立してネットワークを運営する方式に変更。ネットワークへの医療情報の提供については、国民一人一人の同意を必要とするほか、自分の情報を医療機関などの第三者が見た場合には記録が残り、国民の側から確認できる仕組みを入れるなど対策を強化した。今では人口約1700万人のうち約1300万人が同意している。

 ただ、患者側は自分の情報を見…

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら