写真・図版

[PR]

 地方銀行の経営に「黄信号」がともっている。公表された2018年9月中間決算では、貸出先の経営悪化に備えた貸し倒れ引当金がかさみ、利益を押し下げた。企業の経営動向に敏感な銀行の業績の異変は、景気の先行きへの不安を示しているともいえそうだ。

 全国地方銀行協会が中間決算を公表済みの63行分(未公表は1行)を集計したところ、純利益合計は前年同期比30・3%減の3355億円だった。本業のもうけを示すコア業務純益は同3・9%増の5559億円で、超低金利による貸し出し収益減には歯止めがかかったが、貸し倒れ引当金などの「与信関係費用」がかさみ純利益は減った。

 与信関係費用について朝日新聞が公表済み資料から集計したところ、18年9月中間期は計1609億円で、中間決算ベースでは2013年度以来5年ぶりに利益を押し下げた。14~17年度の中間決算では、貸出先の経営改善で引当金がそれほど必要なくなり、「戻り益」として利益に貢献していたが、今年度は逆に引当金を積み増した。

 今年はシェアハウス融資の不正問題を起こしたスルガ銀行(静岡県沼津市)が1196億円もの与信費用を計上し、全体を押し下げた面もある。ただそれを除いても412億円で、前年同期の195億円の「戻り益」からは約600億円の費用増となった。

 メガバンクの中間決算では戻り益が利益を押し上げたが、地銀では対照的な結果となった。決算を公表した銀行幹部の発言からは、景気の先行きへの懸念から、貸し倒れ引当金を多めに積む姿勢がうかがえる。

 常陽銀行(茨城)と足利銀行(栃木)を傘下に持つめぶきフィナンシャルグループ(FG)の松下正直副社長は「景気(拡大)の最終局面に近づいているのは紛れもない事実。より精緻(せいち)にみていく必要がある」。融資先の財務や事業を精査して、与信関係費用を積み増した。北海道銀行の笹原晶博頭取は「景気はそう遠くない時期に転換点を迎える。与信費用は上がって行かざるを得ない」と語った。

 ふくおかFGは傘下3行で「戻り益」が前年同期より60億円以上減った。柴戸隆成社長は「景気はやはり循環する。いずれ後退局面が来ると思って色々な手当てをしている」と話した。山口FGの吉村猛社長も「必要ならばきちんと引当金を積む体制でいく」という。

 鹿児島銀行と肥後銀行(熊本)を傘下に持つ九州FGは与信関係費用が前年同期より27億円増。傘下行の与信関係費用の基準を今年統一し、「厳しい方に合わせて算出した」(担当者)。きらぼし銀行(東京)の常久秀紀専務も「保守的に引当金を積む方向で、行内でも手法を検討している」と話す。マネックス証券の大槻奈那氏は「銀行の収益にはマイナスだが、将来を見すえて、景気が本当に悪くなる前にできる限りの予防をすることは大切だ」と話す。(榊原謙、伊沢健司、高橋尚之)