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【アピタル+】患者を生きる・メタボ(食生活の改善策)

 残業や出張が多いサラリーマンは、食生活も不規則になりがち。おなか回りが大きくなって、血圧や血糖値も高くなるメタボリックシンドロームは、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病につながりやすい危険があります。ところが食生活の改善はなかなか難しいのも現実。どうすればよいでしょうか。日本生活習慣病予防協会の副理事長で東京慈恵会医科大教授の和田高士さん(62)に聞きました。

メタボリックシンドローム
糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病につながりやすいメタボリックシンドローム。おなか回りが男性で85センチ、女性で90センチ以上ある内臓型肥満に加え、血圧・血糖値・中性脂肪のうち二つ以上が基準値を外れている状態を指す。

――メタボ予防の食生活改善は、長続きしないことが多いです。

 テレビや雑誌で、何度も「こうすれば、やせられる」といった特集が繰り返されるのも、まさに多くの人にとって「当たり前のこと」が難しいから。つい、新奇で意外な方法がもてはやされます。しかし、減量の基本は不変。おいしいものを食べ、楽をしたい「快楽」という欲求に打ち勝つしかありません。でも苦しい方法を避けて、「階段よりエスカレーターに乗りたい」と思うのが人間です。シンプルゆえに難しい。

 そもそも人間の体は、普段の食事よりも摂取エネルギーが減り始めると、その少ないエネルギーで効率よく身体をつくろうとします。食べ物が減ると、体が「あぶないぞ!」と警戒して、自らを守ろうとする。つまり人間は「やせにくい」ようにできているのです。

――日本生活習慣病予防協会は「一無、二少、三多」を掲げています。

 基本的な生活習慣についてのスローガンです。「一無」とは無煙のことで、たばこを吸わない。「二少」は少食と少酒という意味で、食べ過ぎや飲み過ぎを避ける。「三多」とは多動・多休・多接で、よく動き、しっかり睡眠を取り、多くの人と接する、これらが肥満防止に重要です。

よくかんで、野菜は先に

――接待などで外食の多い会社員は、どんな工夫ができますか。

 ただ単に「食事やお酒を減らすように」と言われても、なかなか実行できず、いろいろと言い訳をします。しかし「何かしたい」と思い、完全に背を向けているわけではありません。諦めずに取り組みましょう。すぐにできる三つのことがあります。

 一つは「30回かむ」。人は食べてすぐに満腹になるわけではなく、食べ始めてからおなかが満たされた気持ちになるまで20分くらいはかかります。ところが、早食いの人はそれ以前に食事を終えてしまうから、さらに「おかわり」が欲しくなる。そこで、30回かむという動作をすることで、ゆっくり食べることができます。食事に時間を費やせて、その間に満腹感になります。

 二つ目は、野菜を先に食べる。三つ目は、食事以外の時間帯にはカロリーの高い飲み物を避ける。この三つならば、つきあいの多いサラリーマンでも、現在のライフスタイルをそれほど大きく変えずに実践しやすいのでは。

――なぜ野菜を先に食べるのでしょうか。

 これは実験によって確認されています。野菜を先に食べると血糖値の上昇が抑えられるからです。また、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンの分泌量も減り、インスリンをつくっている膵臓(すいぞう)という臓器への負担も減ります。

 血糖が高いと、血液からあふれた糖が脂肪に変わり、内臓脂肪や脂肪肝となって蓄えられます。血糖値を抑えられれば、余計な糖分が生まれず、脂肪もたまりにくいのです。

 高カロリーの甘い飲み物も、血糖値を上げます。最近は子どもでも糖尿病になるケースが増えていますが、これは別名「ペットボトル症候群」と呼ばれ、糖分が多い清涼飲料水などを多く飲んでいることが原因です。

 もちろん、ある程度は血糖値が上昇しないと満腹を感じません。しかし急激に上昇することは好ましくないのです。甘い飲み物も、食事をしながら飲むのなら糖分の吸収も緩やかになりますが、空腹時に飲むと血糖が急上昇しやすいのです。

規則正しい食事を

――そもそも「規則正しい食事」がなぜ大切なのでしょう。

 食べたり食べなかったりすることは、体のバランスを崩します。私たちの研究グループでは、食事や運動、睡眠や喫煙といったさまざまな生活習慣は調査し、肥満への影響度を数値化しました。すると、もっとも肥満に悪影響を及ぼしていたのは、不規則な食生活だということが分かったのです。

 1週間の朝食回数と肥満の関係を調べたところ、もっとも肥満になっていたのは、朝食回数が「週2回」の人たちでした。毎日食べる人とくらべて、肥満になる危険度は男性で1.89倍、女性では4.5倍もありました。つまり「土日だけ朝食をする」といった生活をする人が、もっともメタボになりやすいのです。むしろ、このような人に比べ朝食をまったく食べない人のほうが、メタボの発症を抑えられるという結果でした。

 この結果からは、「食べるならきちんと食べる」「食べないなら食べない」ということが大切だとわかります。どういうメカニズムであるかは長らく不明でしたが、最近の動物実験で「食事が不規則になると栄養の吸収率が上昇する」ことが示されました。ただ、「週末しか朝食をとれないような忙しい生活」というものの悪影響かも知れませんので、さらに研究が必要です。

――まさに「多忙なサラリーマン」には不利ですね。

 海外出張で時差が生じたり、その出張先の食文化が違っていたりすると、どうしても食事は不規則になりがちでしょう。ちなみに「不規則な食事が肥満になりやすい」というのは、まさにサラリーマンの「お給料」と同じですね。毎月の収入が一定にあるなら、貯金をしなくても不安は小さいでしょうが、もし収入が不安定ならば貯金しておかなければ安心できません。人間の体も同じようにできている、というわけです。

 夜食も体に良くありません。食事の回数が増えることで摂取する総エネルギーが高くなりがちですし、エネルギーの吸収率は夜間に高まるので、同じエネルギー量を食べても夜のほうが太りやすいのです。さらに、夜食は食べたり食べなかったりするでしょうから、生活のリズムが崩れてしまうという問題もあります。

 できるだけ食事の回数や時間帯を一定にして、夜食を避けることを心がけましょう。

写真・図版

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<アピタル:患者を生きる・食べる>http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・伊藤隆太郎)