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 今回は小児の急性胃腸炎についてお話しします。お子さんの急性胃腸炎の主な原因となるのはロタウイルスとノロウイルスです。

 ロタウイルスは生後4カ月ごろの赤ちゃんから3歳をピークに5歳ごろまでにほぼすべてのお子さんが感染するウイルスです。3月から5月にかけて流行があり、口から感染して大人にもうつります。

 典型的な症状としては、まず発熱、嘔吐(おうと)が始まり、次いで下痢が起こります。下痢は、米のとぎ汁のような白色の下痢で、酸っぱいにおいが特徴です。1週間程度で回復しますが、けいれんや脳症などの重篤な合併症にも注意が必要です。嘔吐で食事が取れない状態が続く場合や、おしっこが減ってきた場合、ぐったりして目が落ちくぼんでくるような場合には脱水症状の可能性があるため小児科を受診しましょう。

 現在、2種類のロタウイルスのワクチン(任意接種)が接種可能です。どちらも飲むワクチンで、生後6週以降に4週以上の間隔で2回あるいは3回経口接種します。接種できる期間が決められているため、かかりつけの小児科の先生と相談して、生後2カ月からインフルエンザ菌b型(ヒブ)や肺炎球菌のワクチンと一緒に開始するとよいでしょう。

 ワクチンは重症化を防ぎ、通院や入院の回数を減らす効果があり、本人やご家族の負担を軽減させるとともに、地域での流行も減少させると言われています。赤ちゃんがいるご家庭では是非ご検討ください。

 ノロウイルスも患者さんの数が多く、赤ちゃんから高齢者まで感染します。流行のピークは11月から1月にかけてです。

 このウイルスは手などを通して、または適切に処理されなかった嘔吐物やオムツが乾燥して舞い上がった飛沫(ひまつ)物(小さなゴミ)を通して口の中に入り、感染します。半日~2日間の潜伏期間の後に下痢、嘔吐が起き、通常は3~4日で回復します。

 やはり脱水症状を起こす場合があるため、ぐったりする場合などには小児科を受診しましょう。また下痢症に伴うけいれんを起こすこともあるため、手洗いによる予防が重要です。

 急性胃腸炎は、その他の感染症(へんとう炎、急性細気管支炎、手足口病やインフルエンザなど)の原因ウイルスでも発症することがあります。治療は、ウイルスの種類にかかわらず脱水予防です。薬局などで売られている経口補水液(ORS)による水分補給が推奨されていますが、お子さんが嫌がる場合には他の飲み物でも構いません。

 ただし、糖分が多く、ミネラルの少ない清涼飲料水やフルーツジュースは下痢がひどくなったり、塩分が低すぎたりするので避けましょう。赤ちゃんには母乳の場合は欲しがるだけ、ミルクの場合は薄めずに、少量から飲ませてみてください。離乳食は少し前の段階のもの(中期であれば初期のもの、後期であれば中期のもの)に戻してみてもよいでしょう。

 医療機関を受診すると、腸内の細菌のバランスを整えて、下痢や嘔吐、腹痛などのおなかの症状を改善する目的で「整腸剤」が処方されますが、「下痢止め」はおなかからウイルスが排泄(はいせつ)されなくなり、症状が長引くため使われません。重症の場合には外来や入院で点滴を行うこともあります。

 ご家庭での感染防止のためには、お世話をする人も十分な手洗いが大切です。オムツなどはポリ袋に入れて処理をしましょう。保育園や幼稚園への登園再開は、嘔吐や下痢が治まり、食事を取れるようになってからとなります。

 自分が子どもの頃、胃腸炎で寝込んだ時に母が作ってくれたおかゆの味が思い出されます。どんなお薬よりも効果があったかもしれません。胃腸炎は誰もが経験する辛(つら)いことではありますが、患者さんが速やかに回復し、大きくなった後に温かい思い出となればと願います。

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学医学部付属病院小児科助教 渡辺祥二郎)