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 主役は演技未経験の女性4人。上映5時間超。さらに、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞――。そんな異色で規格外の映画「ハッピーアワー」(2015年)のメガホンをとったのが濱口竜介監督(39)だった。最新作「寝ても覚めても」は、カンヌ国際映画祭コンペ部門に選出。観客を引き込み、世界をひきつけるその原動力は何なのか。独特のメソッドと志をつぶさに語った。

1978年、神奈川県生まれ。東京芸術大学大学院の修了制作「PASSION」(08年)で頭角を現す。「ハッピーアワー」(15年)は、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。今年9月公開の初の商業映画「寝ても覚めても」はカンヌ国際映画祭コンペ部門に選出。

 ――「ハッピーアワー」の主人公は30代後半の女性4人。それぞれが抱える家庭や仕事の悩みと、それらに絡んで繊細に変化する互いの関係を描き出しました

 私自身が2013年春から3年間、神戸市須磨区に住む中で生まれた作品です。住んでみて一番驚いたのは「山がこんなに近いんだ」ということ。六甲山系と海の間に街がぎゅっと詰まり、その中を電車が通っている。「自然から都会まで、撮りたいものが全部撮れる」と思いました。

 ――主演女優4人はいずれも演技未経験だったと。どうやって演技に厚みを?

 4人は神戸で開いた演技ワークショップの受講生。撮影前、抑揚やニュアンスを排した声で脚本を繰り返し音読する「本読み」を徹底して行い、本番で初めて感情を入れて演じてもらいました。この方法は最新作「寝ても覚めても」(東出昌大、唐田えりか主演)でも踏襲しています。

 ――ロケ地としての神戸の魅力は

 ごく簡単にいうと「見通しがいい」ということでしょうか。坂をのぼると街が見えたり、窓の向こうに海が見えたり。映画では、見通しが悪いとなかなか絵にならないんです。神戸で生活していて「ここにカメラを置いたら面白いんじゃないか」と発見することが多かった。おそらくだんだんと上にのぼっていく地形が作用しているんだと思います。作家の柴崎友香さんが「ハッピーアワー」の劇場パンフレットに「坂を上ればいつか海が見える」という文章を寄せてくださっていて、まさにこの街を言い表していると思いました。

 ――作中でも、坂の上から見た海の風景が随所に差し込まれています

 観光ビデオではないので、観客の目がロケーションに行きすぎてはいけない。最も優先されるのは人物やその感情であり、その背景に神戸の街がある。

 ただ、神戸で暮らすうち「ここは神戸なのだから海が映るものなのだ」と納得するところもあった。海が撮りたくて撮ったというより、生活の中で自然と「土地に撮らされた」んです。

 ――神戸に来たきっかけを教えてください

 11年から13年にかけて、被災した東北沿岸部のドキュメンタリー映画「東北記録映画三部作」を少人数で作りました。その際、「人やモノが集まる東京じゃなくても、じっくり時間をかければ鑑賞にたえうる映画はつくれる」と実感した。また当時、東京のスピード感や価値観と、自分のやりたいことが合わないんじゃないかと思っていた。そんな中、神戸の知り合いに声をかけてもらったんです。

 ――東京に違和感が?

 映画づくりの中心であるがゆえ…

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