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 リンゴ農家を悩ますネズミの食害。しかし、フクロウが子育てする巣の周りのリンゴ畑では、ハタネズミの数が6割以上減少していることが弘前大などの研究で分かり、フクロウを呼ぶ巣箱設置の有効性を示す論文が13日に英科学誌に掲載された。

 弘前大農学生命科学部の東信行教授と岩手大大学院連合農学研究科のムラノ千恵さんらの研究成果が英生態学会の科学誌「ジャーナル・オブ・アプライド・エコロジー」に発表された。

 リンゴ畑に生息するハタネズミは、エサが減る冬にリンゴの木をかじり、枯らしてしまうこともある。一方、研究室の調査で2001~07年に青森市浪岡地区のリンゴ畑でフクロウの巣をビデオ撮影したところ、卵がかえる4月ごろからひなが巣立つまでの約1カ月間に親鳥は巣1カ所あたり最大300匹のエサを子育てのために捕獲し、8~9割がハタネズミだった。

 フクロウが繁殖しやすい環境を整えれば、深刻な被害をもたらすハタネズミを退治してくれるのではないか。東教授の研究室は、弘前市の「下湯口ふくろうの会」など地元のリンゴ生産者と協力して、14年からリンゴ畑にフクロウの巣箱の設置を始めた。

 さらに16、17年の4月、弘前市西南部のリンゴ畑に仕掛けたわなでネズミを生け捕りにするムラノさんらの調査では、フクロウはハタネズミの生息密度が高い場所の巣箱を繁殖に選んでいることもわかった。

 同じ年の4~11月の調査では、巣から約300メートル内ではフクロウが繁殖していない地域に比べ、ハタネズミの生息数が平均で63%減少。巣に近いほどハタネズミの数が減る傾向があったという。

 東教授は、増えすぎたハタネズミの数をフクロウが減らし、リンゴ畑に生態系のバランスを取り戻す効果が証明できたとしている。ネズミの駆除は農家の負担が大きいが、フクロウが生息する地域では巣箱の設置で被害をかなりの程度、抑えられるとみる。

 東教授は「猛禽(もうきん)類によって害獣を抑制する効果を示した論文は、世界的にもあまり例がない」と話す。研究室では、フクロウの生態の解明をさらに進め、農家の役に立てたい考えだ。実家がリンゴ農家のムラノさんも「ハタネズミが増えやすい条件や雪の下での生態も解明し、リンゴの被害をさらに減らしたい」と話している。(林義則)