[PR]

 大学系列の私立高で、生徒が外部受験をする学校が増えている。生徒はそのまま進学できる安心感より、上位層の大学を狙うことを重視し、学校側もブランドが高まることを期待し、進学指導に力を入れている。

 大妻高校(東京都千代田区)では11月14日、大学の模擬講義が開かれた。東工大や北里大、上智大などから訪れた17人の教授らが「地震はなぜ起こるか」「経済学から考える環境問題」などと専門分野の授業を行い、高1と高2の生徒たちが聴き入った。

 模擬講義の狙いは、目指したい大学の教授の授業を体験することで、進学への意欲を高めることだ。「進路の新しい可能性を考えられて、チャレンジする気持ちがわいてきた」と生徒には好評だった。

 同校は高3が全員、センター試験を受験し、外部の大学進学を目指す。難関大を受験する生徒も多く、昨年度は東大、京大も含めて40人が国公立大に、約20人が医学部・歯学部に合格した。一方、系列の大妻女子大への推薦枠はほとんど使われない。中学入試向けの学校説明会では保護者から、「大妻女子大には行かない学校に変わったんですね」と驚かれる。

 大学側も会議などで「一人も生徒を送らなくて良い。難関大へと勝負する進学校として、大妻ブランドを高めて欲しい」との姿勢を示すという。高校生による図書館の使用を認めたり、少人数授業のために施設を貸したりし、高校の取り組みにも協力している。

 背景には、女子大の人気低下もある。仕事で活躍をしたい人が大学に集まるためには、「進学校」のイメージが役立つといい、成島由美校長(48)は「大学を引っ張るパワーを、高校が求められている」と話す。

根源的な考察力を意識

 東京農業大第一高(東京都世田谷区)は今春の卒業生367人中、同大へ進学したのは5%以下だった。17年度には東大に4人合格し、医学部への進学者も増えた。

 同校は田んぼで稲を育て、ジャムやみそ作り、動物の解体など、実際に手や身体を動かして体験する実学を重視している。「充実した理系の授業を体験したい」と入学する生徒が多い。

 学校ではこうした生徒たちのため、多様な進学先を用意しようとしている。幅広く優秀な生徒を集めるために、進学実績を上げることは学校としても重要だ。

 数年前から東大を意識して対策を取ってきた。「受験対策委員会」を作り、東大数学の解き方のノウハウや模試の分析をしたが、なかなか実績があがらなかった。そこで、根源的な考える力を身につけようと、「一中一高ゼミ」を放課後に始め、折り紙や工作から数学を考えたり、理数分野の英語論文を読んだりする講座を開いている。

 田中越郎校長(64)は「難関大を目指すことで、教師が深い授業に取り組む意識が高まるなど、良いことが多い。のびのびとした進学校になっている」という。

多様性、時代とマッチ

 個性を重視した教育の結果、外部受験する生徒が増えた学校もある。成蹊高校(東京都武蔵野市)は約30年前は卒業生の約半数が成蹊大に進学していたが、昨年度は約2割だった。

 同校は、難関大への進学率を上げることは目指しておらず、ひとり一人のやりたい進路を見つけることに力を注ぐ。自由と主体性を大切にし、コンテストや弁論大会などに出場する生徒が多い。

 結果的に、こうした実績がAO入試や推薦入試で評価されている。昨年度の高3は320人からAO入試の申請が150件あった。東大の推薦入試にも、2年連続で合格者を出した。

 大学とつながっている安心感をベースに、他大学へ挑戦することに、保護者も抵抗感がなくなっている。同校の横井亮教頭(55)は「生徒の多様化を育ててきたことが、入試の多様化と一致した。生徒がのびのびとやりたいことを見つけて力を発揮して、良い進学先につながるようにしたい」と話す。

変化に対応する柔軟性が人気

 大学系列の私立高校の進学について、教育情報会社「大学通信」の安田賢治常務に聞いた。

     ◇

 系列校は現在、難関大学に進学できることを強みにする高校と、系列大学には進まず、進学校化する高校に二極化しています。

 進学校化している高校は、大学へそのまま行ける安心感と、他の大学への進路指導もする面倒見の良さを打ち出しています。大学へ行ける「権利」を持ちながら、難関大や医学部にも挑戦できる可能性が、魅力につながっています。

 先が見えづらい時代には、中学から大学までの10年間の一貫教育だけでなく、柔軟に変化に対応できることが重視されます。だからこそ、安心感もあり、挑戦もできる系列校が人気を集めているのです。(平岡妙子)