拡大する写真・図版 シリアとの国境に近いガジアンテップ県の商店街には、シリア人が経営する雑貨店やレストランが立ち並ぶ=11月15日、其山史晃撮影

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 「欧州に行くのに、お前の金を使わせてもらったよ」。エーゲ海に面したトルコ西部イズミル県にある車の修理工場で働くシリア人のムハンマドさん(38、仮名)はこの夏、欧州への渡航費用として密航業者を名乗るシリア人の男に渡した1800ドル(約20万円)をだまし取られた。金は親族から借りたものだった。

 金を持ち逃げした男は行方不明になり、約2週間後にかけてきた電話で、こう言ったという。

 「ありがとう。欧州に着いたよ。俺も欧州に渡る金が必要だったんだ。ドイツで金を稼げたら、返すから」

2回の被弾、15回の越境

 ムハンマドさんはもともと、シリアの北部アレッポの自動車修理工だった。内戦の激化に伴い、アサド政権からかかった予備役への召集を逃れるため、反体制派の支配地域へ移り住んだ。「私はアサド政権支持でも反体制派支持でもない。でも、私が兵隊に取られれば、どうやって妻と2人の子どもは食べていくのか。他に選択肢はなかった」と振り返る。

 転居後の14年、戦闘の激化に伴い、アサド政権軍に狙撃された。病院に搬送されて一命は取り留めたが、体内には弾が残る。寝たきりの生活を経て約1年後、タクシー運転手として働いていたところ、今度は流れ弾が車体を貫通。足を負傷した。

 16年6月、迫り来る政権軍から逃れるため、反体制派が最大拠点とするトルコ国境の北西部イドリブ県に転居。その頃、オランダに渡った友人から、「オランダでの生活は素晴らしい。子どもは学校に通えていないんだろう。君も欧州に来いよ」と電話で誘われたという。

 ムハンマドさんはまずトルコに渡ろうと決意し、工面した計1200ドル(約13万円)を一家の渡航費用として、密航業者に支払った。トルコへの越境を試みてはトルコ側で拘束、送還されることを繰り返した後、15回目の挑戦でようやくトルコに脱出できた。

 だが、トルコでの生活も楽ではなかった。労働許可は得られず、ようやく探した修理工場の仕事は月給1200トルコリラ(約2万5千円)。半分は月の家賃で消えてしまう。トルコ語もわからず、トルコ人の友人もいない。「自分に学問さえあれば、トルコでも、もっといい条件の職を見つけられたはずだ」と語り、今でも欧州を目指す理由をこう説明した。

 「欧州で、子どもに最高の教育を受けさせたい。トルコに来ても惨めな暮らししかできない。戦争から逃れてきたのだから、シリアには絶対に戻りたくない。欧州に行くしかない。死ぬ覚悟はできている」

欧州難民危機から3年。いま、シリア内戦を逃れた難民の63%、約360万人がトルコに集中する。受け入れは限界に近付いている。

■狭まる欧州…

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