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 安倍晋三首相は4日の年頭会見で、今年を「全世代型社会保障」の「元年」にすると宣言しました。年金や介護など高齢者が対象と思われがちな社会保障の全世代型とは。若い世代をも支える仕組みを構築してきた北欧のいまを報告します。

■山田史比古記者1972年生まれ。文化くらし報道部記者。年金はじめ社会保障や福祉分野にかかわる取材が長い。入社した95年は日経連が「新時代の『日本的経営』」を打ちだした年にあたり、同世代の問題として、完全雇用を前提としたいまの仕事と社会政策の関係をどう再構築できるのかに関心がある。

住宅も社会保障の守備範囲

 フィンランドの首都ヘルシンキ。「いまの若者への支援は、いいシステムです」。ヘルシンキ大のケルッテゥ・ヴァイサネンさん(24)は、2年生進学を控えた昨年夏、学んでいる日本語とフィンランド語を交え、そう話した。

 大学や職業学校などで学ぶ人には、公的な学生手当がある。年齢や家族形態で額は違い、彼女は税引き後で月約250ユーロ(約3万1千円)。学生向けアパートを安く提供する非営利機関「HOAS」の3人部屋に住み、家賃はひとり月290ユーロ(約3万6千円)。8割超にあたる約250ユーロは公的な住宅手当で賄える。

 北欧では、高校を卒業するころには親から自立するのが一般的だ。彼女もスーパーのレジ係として働く一方、隣の市に住む親からの仕送りは受けない。「手当がなければ、学生生活は送れなかったかも」

 手当類の財源は、最高税率24%の付加価値税(消費税)など高い税負担だが、「それで生活の土台が与えられるなら」と言う。

 学生手当から年金まで約40種の公的給付を一括管理する公共機関が、「KELA」だ。同国出身の国際的な建築家、アルバー・アールトが設計した庁舎で、「すべての国民の生活を支えるのが、私たちの役割です」とKELA研究員のシグネ・ヤウヒアイネンさんは誇らしげに話す。育児手当や失業手当なども含めると、18~29歳のうち8割が、何らかの公的な手当を受けている計算だという。

 147億7千万ユーロ(約1兆8千億円)に達するKELAの年間支出(運営費も含む)のうち、最も多いのは障害年金も含めた年金で24%を占めるが、学生手当や利子付き奨学金など学生向けも6%。住宅手当は7%を占める。日本では個人の問題とされがちな住宅も、欧州では家賃などの住居費を補助する公的手当があり、社会保障の守備範囲だ。

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 ヘルシンキ大から約2キロ。8階建ての学生アパートの最上階には学生用のサウナがあった。「フィンランド人はサウナ好きだからね」とHOASの幹部、トンミ・オラさんは笑った。HOASが提供する住まいの家賃は、民間より最大で4割ほど安い。

 学生も住宅手当を受けられるようになったのは2017年からだ。それまでは学生手当に上乗せする「住宅加算」だった。加算だと、1年のうち授業があって学生手当が出る9カ月分しか支給されない。住宅手当なら授業に関係なく12カ月分受けとれる。この変更は「学生団体が長年要望してきた成果だ」という。

 HOASの調査で、14年にアルバイトや仕事をしている学生は約47%だったが、16年は約58%に。財源の制約で公的な学生手当が減額されるなか、「学生も豊かな暮らしを求め、収入を必要とするようになった」とオラさん。

 住まいも、個室を求める学生が増えている。HOASが所有する約9500戸のうち2割ほどしかない個室は満室状態が続き、大規模な新築計画を進める。

 「住宅の質は年々あがっている。しっかり勉強して『よき納税者』になってもらわないといけない若者には、快適な住まいが必要だ」とオラさんは話した。

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 深刻な住宅難にあえぐ、隣国スウェーデン。賃貸を借りるには、民間アパートであっても、公的な待機者リストに登録して空室が出るのを待つ必要がある。都市への人口集中が続き、首都ストックホルムでは、登録しても希望にあう物件が見つかるまで20年近く待つことも。分譲マンションも高騰している。

 看護師の男性(35)は11年余り「待機」した。3年余前にいまの住まいが見つかるまで、パートナー(30)と2人、彼女の姉の友人から部屋を借りていた。

 いま、2人は首都の中心部から電車で30分ほど、築約50年のアパートに住む。数年前にリフォームで家賃が上がって前の入居者が払えなくなり、空室になった85平方メートルで、家賃は月9500スウェーデンクローナ(SEK、約12万円)。住宅不足で違法な「また貸し」も横行し、裏のマーケットで同程度の部屋を借りると、2倍以上はかかるという。

 2人は「私たちは運がよかった…

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