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 東名高速で昨年6月、ワゴン車の進路を「あおり運転」などで妨害して停車させ、トラックによる追突事故で夫婦を死なせたとして、危険運転致死傷罪などで起訴された被告の裁判員裁判が3日、横浜地裁で始まる。弁護側は事実関係を認めつつ、「事故は停車後に起きている」として無罪を主張する方針。亡くなった夫婦の友人は裁判を傍聴し、結果を墓前に報告する予定だ。

 事故で死亡した萩山嘉久さん(当時45)と友香さん(当時39)の墓は、静岡市清水区の、富士山がよく見える丘の上にある。嘉久さんの親友の田中克明さん(46)は11月中旬に訪れた際、「(裁判で)もうすぐ答えが出るね」と手を合わせた。

 田中さんには事故直後の昨年6月5日午後9時39分、夫婦の長女から電話がかかってきた。その時に聞いた言葉を、タブレット端末に書き残した。

 「追い回され、車線変更しても前に入られブレーキ。最終的に停車。降りてきて父の胸ぐらをつかみ、謝ってもダメ。怖い。妹も泣きじゃくっている」

 ワゴン車は停車中に、大型トラックに追突された。ワゴン車付近にいた嘉久さんと友香さんが死亡し、車内にいた長女と次女もけがを負った。

 「衝撃で目をつぶってしまい、目を開けたら父も母もいない。隣を見ると妹が血だらけ。私も肩と腕が痛い」

 警察の到着を待つ間、田中さんは電話越しに励まし続けた。翌日、病院に到着すると、姉妹がわっと泣きついてきた。「お父さんとお母さんがいなくなっちゃった」。田中さんは2人を抱きしめることしかできなかった。嘉久さんの顔は安らかで眠っているようだった。「こんなところでなにやってんだよ」。思わず、そんな言葉が漏れた。

 あれから1年半。トラック運転手の田中さんは、仕事で東名高速を走ることも多い。事故現場付近を通るとき、必ず車内の音楽を消して、想像する。「怖かっただろうな、痛かっただろうな」。いつか、夫婦が倒れていた場所で花を手向けたい。

 夫婦の墓に毎月訪れ、嘉久さんが好きだったカップ焼きそばとミルクティーを供える。墓石に刻まれた行年を見る度に「早すぎる」との思いが募る。裁判を傍聴し、墓前で詳細を報告するつもりだ。(大西明梨)

■停車後の事故、ど…

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