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 線虫はミミズに似た形の生物で体長約1ミリ、土中の細菌が主な餌だ。獲物を捕食しながら一日1メートル近くも移動し、光から逃げる習性をもつ。これを放射能除染に利用する研究を、大阪府立大学講師の徳本勇人(はやと)さん(47)らが手がけている。

 汚染土壌中に放射性セシウムを体内へ取り込む細菌を増殖させ、線虫を放つ。一定時間後に強い光を当てれば、細菌を飽食した線虫が光源の反対側へはい出てくる。そんな流れ作業の仕組みが作れないか。大学院生の合田亮(りょう)さん(23)や岡野凌一さん(26)らが、培養条件を少しずつ変えて細菌と線虫をシャーレ内で一緒に飼い、線虫の繁殖ぶりを顕微鏡で延々と数えた。基礎実験の段階ながら、好条件下で、増殖する細菌を食べ続けた1千匹の線虫は4日後、10万匹に増えた。

 徳本さんの心の片隅には、父の実家、富山で起きたイタイイタイ病の光景がある。専門は生物学だが、化学反応プラントの設計も研究した。その矢先、東日本大震災の原発事故。汚染が広範囲へばらまかれる人災が繰り返された。「地味な研究だが、学生たちが負の遺産との向き合い方を考える機会になれば」と語る。

(編集委員)

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