[PR]

 日本政府と三菱重工業が、トルコの原発計画を断念する方向へとかじを切った。安全基準の強化を受けた事業費の高騰で、原発は採算をとるのが極めて難しくなっている。失敗続きの「原発輸出」政策は行き詰まっている。

 アルゼンチンのブエノスアイレス。主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席するために訪れた安倍晋三首相は1日午前、トルコのエルドアン大統領と向きあった。

 会談時間は約40分。日本政府関係者によると、会談で両首脳は、シノップ地区の原発計画について話し合い、実現が難しくなっているとの認識を共有した。

 5年前、計画を大きく前に進めたのも両首脳だった。2013年10月、トルコで開かれた首脳会談で2人はトルコの原子力エネルギーに協力する共同宣言に署名。安倍首相の「トップセールス」で日本連合がシノップに原発4基をつくることで大枠合意した。現地には三菱重工の宮永俊一社長も入った。

 トルコ建国100周年にあたる23年の稼働をめざした計画に暗雲が垂れこめたのは、今年に入ってからだ。事業化に向けた調査を進めた三菱重工が、事業費が想定の2倍超となる4兆円以上にふくらむとの試算をはじき出した。

 参加企業がいったん事業費を負担し、発電事業による利益で回収する仕組みのため、事業費が膨らむと、電気料金を割高にしなければ採算割れしかねない。

 「失望した」。水面下で伝えられたトルコ側は怒りを隠さず、3月に予定していた調査報告書の受け取りを拒否し、試算の練り直しを促した。しかし三菱重工は「損してまで受けられない」(幹部)として試算を大きく変えず、7月に最終報告書として提出した。「民間企業として、事業性がある形での参画という範囲内を逸脱できない」(宮永社長)という。

 三菱重工はいま、政府が旗を振った国産ジェット旅客機MRJの開発に巨額の資金をつぎ込む。防衛事業をはじめ、政府とかかわりの深い事業も多い。政府内では、米国の原発事業がもとで経営危機に陥った東芝になぞらえ、「二の舞いになりかねない」として計画の断念を容認する声が広がった。

 ただ、あからさまに交渉決裂の…

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら