カイシャで生きる 第12話
元電通マンはいま、新潟の魚沼でおいしいコメのために働いている。こんな働き方があったんだな、と感じながら。
組織の歯車として一日一日を懸命に生きる。ときに理不尽な人事や処遇に苦しんだり、組織との決別、新しい人生を考えたり。様々な境遇や葛藤を経験しつつ前に進もうとする人々の物語を紡ぎます。
◇
「明日にでも電通を辞めて欲しい」
妻は医師にきっぱり答えた。夫に何を望むかという問いだった。横に座っていた渡辺泰治さん(58)はびっくりした。
妻がそんなことを言ったのは初めてだ。2011年12月のことだった。
当時、電通ソーシャルソリューション局の部長だった渡辺さん。食べ物がのどを通らなくなり、10キロ近く体重が落ちていた。摂食障害だと診断された。
それでも仕事への意識が張り…

50代の居場所を探して
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