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 1985年に熊本県松橋(まつばせ)町(現・宇城市)で男性が殺害された「松橋事件」のやり直しの裁判(再審)で、殺人罪などで服役した宮田浩喜さん(85)について、熊本地検が新たな有罪主張をしないことがわかった。宮田さんは事件から30年余りを経て、殺人罪の無罪が確定する見通し。熊本地裁で20日に開かれた弁護団との協議で、検察側が明らかにした。

 弁護団によると、検察は再審公判では殺人罪について求刑をしない方針も明らかにした。地裁は、宮田さんが高齢であることを踏まえ、「裁判が長引くことは望ましくない」などと説明。できるだけ早期に判決を言い渡そうとする姿勢を示したという。期日は正式に指定されていないが、早ければ来年2月8日にも再審の初公判が開かれる見通し。

 一方、捜査段階での自白調書の取り扱いについては、検察と裁判所の意見が分かれた。地裁は「自白調書を踏まえて判断しようとすれば、判決を出すまでの時間が長引く可能性もある」などと指摘。「検察が有罪立証をしないのなら、(有罪の根拠とされた)自白調書は、取り調べをしなくても良いのではないか」という趣旨の提案をした。検察側は「非常に難しい。即答はできない」と応じ、来年1月31日の協議で改めて話し合うことになった。

 松橋事件では、当時59歳の男性が殺害され、将棋仲間だった宮田さんが取り調べの末に自白し、殺人罪などで起訴された。熊本地裁での公判中に否認に転じたが、懲役13年の判決が言い渡され、90年に刑が確定した。

 97年になって、弁護側の請求で熊本地検が保管していた証拠が開示され、宮田さんが「凶器に巻き付けて使った後で燃やした」と自白していたシャツの袖が見つかった。弁護団はこれらの新証拠をもとに2012年、再審を請求。熊本地裁は16年、「自白の信用性を認められなくなった」として再審開始を決定した。福岡高裁も翌年、地裁の決定を支持した。検察側は特別抗告したが今年10月、最高裁が棄却し、再審開始が決まった。

 宮田さんは脳梗塞(こうそく)を繰り返し、自由に体を動かしたり話したりできない状態となっており、弁護団は速やかに無罪判決が出るよう求めていた。

松橋事件の経過

《1985年1月》

熊本県松橋町(現・宇城市)で、男性(当時59)の遺体が見つかる。県警は宮田浩喜さんを殺人容疑で逮捕

《86年12月》

熊本地裁が宮田さんに懲役13年の判決

《90年1月》

最高裁が上告を棄却

《97年》

弁護側が証拠品の閲覧を申請し、熊本地検がシャツの布などを開示

《99年》

宮田さんが刑期を終え出所

《2012年3月》

宮田さんの成年後見人の弁護士が再審請求

《16年6月》

熊本地裁が再審開始を決定

《7月》

熊本地検が即時抗告

《17年11月》

福岡高裁が即時抗告を棄却

《12月》

福岡高検が特別抗告

《18年10月》

最高裁が特別抗告を棄却。再審開始が確定