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 500匹ものコクゾウムシが、北海道で出土した縄文時代の土器の中に練り込まれていることが、熊本大の小畑弘己教授(考古学)の調査でわかった。意図的に混入されたとみられ、豊穣(ほうじょう)を願う祭祀(さいし)行為のあらわれではないかという。

 コクゾウムシはゾウムシの一種。コメにつく害虫として知られるが、本格農耕のない縄文時代は、貯蔵されたドングリやクリを食べていたことがわかっている。

 小畑さんは北海道福島町の館崎(たてさき)遺跡から出土した縄文後期の土器を分析。土器の表面や内部をX線CTスキャンなどで調べた結果、コクゾウムシの圧痕(あっこん、スタンプ)が大量にあることを突き止めた。その数は推定で500匹余りにのぼり、偶然にしては不自然に多すぎるため、縄文人が土器の製作過程で意図的に大量のコクゾウムシを練り込んだ結果と判断した。

 「縄文人がコクゾウムシをクリの化身とみなして豊穣を願ったことを示唆しているのではないか。彼らの考え方の一端がみえるようだ」と小畑さん。その成果はこのほど刊行された英国の専門雑誌に掲載された。

 また、東日本のコクゾウムシは、西日本のものより2割ほど大きいこともわかった。えさの栄養価の違いらしい。

 従来、コクゾウムシの痕跡は縄文時代に小規模な稲作が存在した証しとみる見解もあったが、小畑さんらの研究でそれらは堅果(けんか)類を食べていたことが判明。縄文人の暮らしぶりを解き明かす資料として注目を集めている。(編集委員・中村俊介