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 昨年休刊した仏教美術の学術雑誌「佛教藝術(ぶっきょうげいじゅつ)」(毎日新聞出版)の精神を受け継ぎ、有志の研究者が新たに再生させた「仏教芸術」(中央公論美術出版)が10月末、創刊された。創刊号は日本の仏教美術の原点とも言える奈良・法隆寺の金堂を採り上げた「創刊記念座談会」が中心で、金堂の謎にスポットをあてた。

 終戦直後の1948年に創刊された「佛教芸術」は、日本や中国、インドなど東洋の仏教美術を中心とする研究論文を載せてきた。昨年1月の350号で休刊したが、一部の研究者たちが新たな研究誌として再生させようと「仏教芸術学会」を設立。美術史や建築史、考古学などの研究者や学生約200人が集まり、東大寺など奈良や大阪の諸大寺や石橋財団(東京)の支援を受け、「仏教芸術」を年2回発行することになった。

 創刊号の座談会は、仏教芸術学会設立準備委員会代表の有賀祥隆・東京芸術大客員教授(日本絵画史)ら7人が出席した。建築史に詳しい清水重敦・京都工芸繊維大教授が、金堂が現状の2階建てではなく、1階建てとして計画された可能性を指摘。法隆寺国宝保存工事事務所長だった故竹島卓一さんが唱えた説だったが、金堂の上重(2階)が初重(1階)の柱の上に、別の柱をのせる形で造られていたことを根拠とした。

 また、五重塔は質の良い材木を使っていたが、金堂は節の多い材が多く使われ、同じ寸法で製材した「規格材」が目立つ。清水さんは「相当短期間で造ったか、それほど格の高い建築ではないものとして造ったか、特殊な創建の経緯が想定できる」とみる。

 清水さんによれば、金堂の柱は壁に接する部分に突起があるが、壁の表面が厚く塗り込められ、表からは見ることができない。重い壁を支えるように、内部の補強材が壁の下側へ多く配置されていたようだ。「当初薄い壁を造る計画だったのに、厚い壁に変更されたという考え方もある」

 壁画の美術史的な解釈も話題となった。壁画12面のうち大壁4面は壁の方角などを根拠に、1号壁=釈迦浄土▽6号壁=阿弥陀浄土▽9号壁=弥勒浄土▽10号壁=薬師浄土――とされている。中国の仏教美術に詳しい肥田路美・早稲田大教授は「方角と阿弥陀とか、薬師とかを一致させて考えることは、中国の事例から見ると必ずしもそうはいかないのではないか」と述べ、10号壁の足を伸ばして椅子状の台に座る姿を「弥勒」に、9号壁を「薬師」とみた。

 創刊号は全国の書店やアマゾンなどで購入できる。仏教芸術学会(http://www.butsugei.org/index.html別ウインドウで開きます)は会員資格に厳しい制限を設けていない。年会費は一般5千円、学生3千円、賛助1口1万円以上。(編集委員・小滝ちひろ