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 英国の欧州連合(EU)からの離脱条件を定めた協定案をめぐり、メイ首相は11日に予定された英議会の採決をいったん延期した。EUと再交渉したうえで、議会の承認を得たい考えだが、EUのトゥスク首脳会議常任議長(大統領に相当)は10日、「再交渉はしない」と改めて強調した。

 トゥスク氏はツイッターで、13日の首脳会議で離脱問題を話し合うと明らかにしたが、再交渉は明確に否定した。ただ「英国での承認を手助けする議論の準備はある」と含みを持たせた。協定案が発効しないまま来年3月の離脱を迎え、英・EU双方で経済や市民生活の混乱が予想される「合意なし離脱」を避けるため、英議会での協定案の承認が得られるよう、EU側はメイ氏を何らかの形でサポートする姿勢だ。

 メイ氏は10日の英議会で、11日の採決の延期を表明。英・EU双方が11月に合意した協定案には与野党議員から反発が強く、大差で否決されて「合意なし離脱」に追い込まれたり、自身の退陣論が強まったりするのを防ぐためだ。ただ、採決の時期は明らかにせず、越年の可能性も否定しなかった。承認が得られる見通しは立たず、合意なし離脱に向けた準備も加速するとした。

 協定案で特に反発が強いのは英領北アイルランドの国境管理をめぐる「非常措置」だ。隣接するアイルランド共和国との間に物理的な国境を作らないため、他に解決策がなければ、英国全体がEUの関税同盟にとどまるというもの。メイ氏は、非常措置を発動せずに済むようEUとの通商協定の協議を進めると訴えてきたが、EUのルールから早く抜けたい与党・保守党の強硬離脱派を中心に、議員の理解は得られていない。

 10日のロンドン外国為替市場では採決延期を受け、先行きの不透明さが警戒され、英通貨ポンドが急落した。ドルに対しては一時、1ポンド=1・25ドル近辺と昨年4月以来、約1年8カ月ぶりのポンド安水準になった。10日の欧州株式市場も全面安となり、ドイツやフランスの主要株価指数はともに前週末終値より約1・5%安で取引を終えた。(ロンドン=下司佳代子)