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 フランスのマクロン大統領は10日夜(日本時間11日未明)、国民向けにテレビ演説し、燃料税引き上げ方針をきっかけに反政府デモが全土に広がったことを踏まえ、来年1月から最低賃金を月額100ユーロ(約1万3千円)引き上げ、残業代やボーナスを非課税にするなどの譲歩策を発表した。

 マクロン氏は先月17日から続く「黄色いベスト」運動について、「多くのフランス人が共有できる深い怒りだ」と理解を示し、「経済と社会の非常事態を宣言したい」として所得再分配策を明らかにした。

 手取りが月額1185ユーロ(約15万円)の最低賃金を100ユーロ(約8%)引き上げるほか、残業代には課税せず、労働者が満額受け取れるようにする。また、今年1月から引き上げていた社会保障税についても、毎月の年金額が2千ユーロ(約26万円)未満の退職者には、増税を撤回する。この年末に企業が支払うボーナスは非課税にし、企業に積極的な支出を促した。11日に議会に一連の譲歩案を提案する。

 フランス語で黄色いベストを意味する「ジレ・ジョーヌ」運動は、単に燃料税引き上げの撤回を求めるだけでなく、労働者や社会的弱者へのより公正な再分配をめざしている。衰えぬ運動にマクロン氏が大幅な譲歩を迫られた。

 マクロン氏は財源については語らず、来年の予算で財政赤字をGDP比2・8%以内に抑えるという当初目標をどう達成するかは明らかにしなかった。

 「富裕層のための大統領」との批判を浴びるきっかけとなった今年1月の富裕税撤廃については「(この税のために)富裕層が国外に去り、国力が弱まった」として復活は拒んだ。

 デモ参加者の多くがマクロン氏の辞任を求めている上、5回目となる15日の大規模デモもすでに呼びかけられており、運動が完全に沈静化するかは見通せていない。(パリ=疋田多揚)