故郷に向かう帰省ラッシュがもうすぐ始まる。そのふるさとが、消えるかもしれない。30年前、日本社会に警鐘を鳴らした論文は、社会学者が四国の集落で聞いた一言がきっかけだった。現場を訪ねた。

車なく…ここに人が

 ハンドルを握る手が、汗ばんできた。

 11月下旬、四国山地の懐に抱かれた高知県仁淀川(によどがわ)町。レンタカーは国道を離れ、渓谷沿いの道に入った。待ち合わせ場所まで約8キロ。少しずつ道が細くなる。標高600メートル近い山間部。窓を開けると、冷気が流れ込んできた。

 ハンドルにしがみつき、山道を上がっていく。不安な気持ちを笑うように、道は曲がり、細くなる。ぽつりぽつりと道沿いにあった民家も、やがてなくなった。

 国道を離れて約40分。目的地に着いた。すれ違う車は1台もなかった。不安が首をもたげてきた。本当に人が住んでいるのだろうか。

「おらぁの代で終わり」

 「そこに、アキばあちゃんという人がいるんだ。最後に会ったのはもう4年前になるかな。そのときで85、86歳だった。元気かなあ」

 仁淀川町に向かう1カ月前、高知大学名誉教授の大野晃さん(78)に電話をすると、懐かしそうに言った。

 環境社会学者の大野さんは、1980年代から仁淀川町(当時は池川町)の集落に通う。チェーンソーなどの激しい振動を伴う機械を使う林業労働者が職業病にかかる例が増えていた。林業に従事する人たちがいる集落を幾つも訪ね、ひざ詰めで話を聞いているうちに、別の問題に気づいた。

1988年に発表された「限界集落」論は、社会に衝撃を与えた。論文のモデルとなった集落を記者が訪ねると、現在は2世帯2人になっているという。アキばあちゃんは今どこに。集落出身の人に話を聞くことにした。

 どの集落も世帯が激減し、残っ…

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