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 長崎への原爆投下時に、国が定める被爆地域の外にいた「被爆体験者」161人が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付などを求めた訴訟の控訴審判決が10日、福岡高裁であった。矢尾渉裁判長は、10人に手帳の交付を命じた一審・長崎地裁判決を取り消し、原告全員について手帳交付を認めない判断を示した。原告側は上告する方針。

 判決があったのは被爆体験者の集団訴訟第2陣。原告は原爆投下時に爆心地から12キロ圏内で、国が指定する被爆地域(爆心地から南北約12キロ、東西約7キロの範囲)の外にいた。被爆者健康手帳が交付され、医療費の自己負担分が原則無料になる被爆者とは区別されている。原告のうち16人は控訴審結審までに死亡し、遺族が訴訟を引き継いでいた。

 争点は一審と同様、原告が被爆者援護法で定める被爆者に当たるかだった。

 控訴審判決は、健康被害が生じる可能性があった被曝(ひばく)線量について検討。県や市の主張を採用して、「年間100ミリシーベルト以下の低線量被曝(ひばく)で、健康被害が生じる可能性があるという科学的知見は確立されていない」と判断。原告の被曝線量については、被告側の主張に基づいて「最も高かった区域でも約18・7ミリシーベルトを上回ると推計できない」と指摘し、原告側の「低線量でも健康被害が生じる可能性がある」との主張を退けた。

 2016年の一審判決は、米国調査団の測定データを基に原告の被曝線量を個別に推計した医師の意見書などを踏まえ、旧長崎市の東側の旧矢上村と旧戸石村にいた10人を被爆者と認めた。控訴審判決は、データが国際的基準より地表に近いところで計測されていたことなどから、医師の推計値が「過大となっている可能性がある」として、採用しなかった。

 内部被曝の線量についても「長期的に見てもかなり微量にとどまる可能性が高い」と指摘。「微少な線量の内部被曝で、健康への影響が生じると直ちに認めることはできない」と判断。被爆者援護法で被爆者と定める「放射能の影響を受けるような事情の下にあった人」には当たらないとした。

 「被爆地域」を巡っては、原爆医療法(現・被爆者援護法)が1957年に施行され、旧長崎市を中心とする被爆地域が定められた。74年と76年に周辺の地域が「健康診断特例区域」(現在の第1種健康診断受診者証の交付区域)に指定された。特例区域では、がんを患うなど一定の条件で手帳の交付を受けられるようになった。さらに02年、原告らが投下時にいた12キロ圏内で、被爆地域から外れた地域を「健康診断特例区域」(第2種健康診断受診者証の交付区域)に追加指定したが、医療費給付の対象は被爆体験による精神疾患や合併症などに限られた。

 原告側は、爆心地から5キロ以遠の距離にいた人を被爆者と認めたり、認めなかったりしている状況を違憲だと主張していたが、判決は「違憲、合憲にかかわらず、被爆地域外の原告たちが『被爆者』の要件に該当することにはならない。違憲かどうかは判断する必要は無い」と退けた。

 別の被爆体験者らが起こした第1陣の訴訟は昨年12月、最高裁が原告387人の上告を退け、敗訴が確定した。原爆投下直後に爆心地周辺に近づいたと訴えた1人は長崎地裁に審理を差し戻した。(一條優太)

■原告ら「こんな悔しいことはな…

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