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 戦争はいけないことだ、というと常識に聞こえるが、20世紀初めまでの世界は、実はそうではなかったという。17世紀以降の戦争をめぐる歴史を掘り下げ、無名の人々の思いが現代の「戦争を違法とする秩序」につながったのだとする米国の気鋭の研究者2人。戦争なき世界への道や日本の憲法9条について、思いを聞いた。

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 ――20世紀前半に起きた、戦争をめぐる理念や思想の転換を描いた著書「逆転の大戦争史」(文芸春秋)が話題です。私は戦後日本で育った53歳ですが、罪のない人々が犠牲になる戦争が許されないのは当然だと思ってきました。

 オーナ・ハサウェイ 私たちもそうですよ。でも、かつては国と国の争いを解決する手段として、戦争は国際法上「適法」でした。逆に、経済制裁に加わることは、中立に反し、違法だったのです。

オーナ・ハサウェイ
1972年、米西部オレゴン州生まれ。イエール大教授。米国防総省や米国務省の法律顧問も務めた。

 スコット・シャピーロ わずか100年ほど前までの話です。今では国家間の戦争は許されなくなり、経済制裁が手段となっています。こうした世界の「秩序」の逆転がどう起き、その後の世界をどう変えたのか。そんな疑問が我々の研究のスタートになりました。

スコット・シャピーロ
1964年、米東部ニュージャージー州生まれ。イエール大教授。単著「合法性」は中国語やスペイン語に訳された。

 ――1928年に日本を含む15カ国がパリで調印し、「戦争は違法だ」と宣言した不戦条約が、現代世界の「秩序」のルーツだと指摘していますね。

 ハサウェイ とても興味深かったのは、人々の考え、思想がいかに重要で、大きな力を持つのかでした。不戦条約に名前が残るケロッグは米国の国務長官、ブリアンはフランスの外相ですが、戦争を違法化するというアイデアを思いつき、運動を始めたのは企業法務が専門のシカゴの弁護士でした。米国が戦争に巻き込まれないでほしい、自分の子どもを戦地に送りたくない、という一市民としての素朴な思いが原点でした。有名人でも権力者でもない彼の考えや行動が、世界秩序に影響を与えたのです。

 シャピーロ 無名の理想主義者の思想が、現実になりました。この弁護士は、友人の哲学者に働きかけ、一緒に活動します。ちょうど私たちのように、法律の専門家と哲学者のコンビです。ほかにもこの弁護士はイエール大学の同級生だった後の米国の国務長官スティムソンなど、あらゆる国内外のネットワークを駆使。努力と理念と想像力が実を結んだのです。

 ――不戦条約は私も学校で習いました。ただ、第2次世界大戦を防げなかった「紙切れの平和条約」だったという評価もあるのではないですか。

 ハサウェイ それが常識的な見…

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