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 タクシー運転手が乗客から暴行されるなどの事件が全国で相次いでいる。今年5月には、さいたま市で男性タクシー運転手が乗客の男から暴行を受け、重体になる事件が発生した。忘年会シーズンの12月。タクシー利用者が増える中、業界は対応に苦慮している。

 「体に障害が残っても、主人の『心』だけは返してほしい」。7日午前、さいたま地裁。タクシー運転手の小倉章正さん(69)=千葉県白井市=が乗客から暴行を受けた事件の公判で、妻の玲子さん(57)が訴えた。

 章正さんが事件に遭ったのは5月18日未明。東京都内で塗装工の男(29)を乗せ、さいたま市内まで走った。目的地に着いた章正さんは、寝込んだ男を起こすため後部座席のドアを開けて男の肩を揺すった。

 すると男は逆上。章正さんは顔や頭を何度も蹴られるなどした。男は傷害容疑で逮捕、起訴されたが、当時は泥酔しており、埼玉県警の調べにも「覚えていない」と話したという。

 事件から約1週間後。章正さんはようやく目を開いたが、重い後遺症が残っていた。半年経った現在も、問いかけには反応がほとんどなく、一人では体も動かせない。

 定年までテレビ番組制作会社でカメラマンとして働いた。事件前は「(3月に生まれた)孫の写真は俺が撮るんだ」と話し、成長を楽しみにしていたという。「命以外、人間としての全てを奪われた」。玲子さんは悔しがる。回復は遅く、通常の生活を取り戻すのは難しい。だが玲子さんは章正さんのためにバリアフリーの家を建て直し、「どんな状態でももう一度家に迎え入れたい」と話す。

 男は公判で、起訴内容を認めている。判決は20日に言い渡される予定だ。