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 温泉郷で知られる岩手県西和賀町で、町営の温泉施設が苦境にあえいでいる。町内10カ所の施設は赤字続きで、ここ5年間の町予算からの持ち出しは総額6億6千万円に上る。利用者の減少に老朽化が追い打ちをかけている格好で、町は施設の一部の売却も含めて運用方法の検討を始めている。

 1990年に東北初の砂風呂としてオープンした同町槻沢の町営施設「砂ゆっこ」。温泉で約45度に温めた砂場に埋まる快適さが評判で、黄金週間や紅葉シーズンは「順番待ち」が出来るが、晩秋から豪雪の冬場は極端に客足が落ちるのが悩みだ。「誰も来ない日もある」と職員の女性はぽつり。

 「東北有数の温泉郷」が枕ことばの同町は湯本、湯川、巣郷など10カ所ほどの温泉地がある。町営の温泉施設は、多くが合併前の旧湯田町が進めた「お湯~とぴあ」構想などで、80年代後半から2000年代初めごろに建てられた。JRほっとゆだ駅構内の温泉、錦秋湖近くの洞窟風呂など内容も多彩で、当時は観光の目玉になっていた。

 だが、近年は赤字が続く。町営10施設を合わせた13~17年の運営費は年間平均2億1430万円。入湯客からの使用料収入は平均約8300万円に対し、維持費や指定管理・委託料などの町の持ち出しは毎年平均1億3130万円になっている。

 町観光商工課によると、00年ごろまでは公営の温泉を中心に50万人近くが日帰りで訪れていたが、県内外で温泉施設が出来た影響で来訪客が減り、最近5年間の年間平均利用者は28万9千人に落ち込んだ。

 深刻なのが施設の維持費だ。1基300万~600万円する源泉くみ上げ用ポンプは2~5年おきに交換が必要な上、最近は施設の壁や屋根の老朽化が進み、交換や修繕を余儀なくされている。今年9月の定例町議会では、細井洋行町長が「すべての施設を維持するのが難しいというのが共通の認識」と述べた。

 町観光商工課の佐藤太郎課長は「売却も含めて検討せざるを得ない時期に来ている。早急に方針をまとめていきたい」としている。(溝口太郎)