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 「いわゆるおめかけさん」。1985年、厚生省が国会の委員会でそう述べた。「私たちこんな風に見られているんだ」。30歳のシングルマザーは、ぼうぜんとした。反対する団体の一員だった赤石千衣子(ちえこ)さん(63)。国は、母子家庭に支給する児童扶養手当の総額を減らすため、「未婚の母」を対象から外そうとしていた。

 教育熱心な家庭だったが、父は暴力的で母と不仲だった。末っ子の赤石さんが笑顔で和ませる役回りだった。東京大学で社会学を学んだが、生き方に悩んで就職しなかった。アルバイトをしながら演劇研究所に通っていた時、恋人との子を身ごもった。

 相手は一緒になる気がなく頼れない。一人で育てられるか不安だった。26歳で息子を産み、この世に足をつけることができた気がした。

 恋人との別れ、命の誕生。悲しさとうれしさが入り交じった。子を持つ親が共同で運営する保育所を友人が紹介してくれた。息子を通わせながら保育者として働いた。

 未婚の母への児童扶養手当がなくなるかもしれないと、保育所で耳にした。「あなたのことよ」。勧められ、同じ母子家庭の女性が集まる「児童扶養手当の切り捨てを許さない連絡会」に参加した。

「覚悟してお産みになった」

 大蔵省との交渉で、未婚の母に不利な税制について尋ねたら、「覚悟してお産みになったから」と言われた。憲法は法の下の平等を定めている。「差別がある社会だと分かって産んだ自己責任、というのはおかしい」

 児童扶養手当については、結果的に未婚の母が対象から外されることはなかった。だが、所得に応じた支給の制限が厳しくなった。その後、バブル崩壊後の離婚の増加と財政難を背景に、児童扶養手当は度々減らされそうになった。

 2002年、受給が5年を超え…

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