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 18日で半年となる大阪北部地震では、5万棟を超える住宅が壊れた。大半が被災者生活再建支援法の対象にならない一部損壊だ。今なお被災地では屋根をブルーシートで覆った住宅が目立つ。

 大阪府茨木市の名神高速茨木インターチェンジ近くの住宅街。門田勝次郎さん(66)、弘子さん(66)夫妻宅は一部損壊と判定された。屋根瓦がずり落ち、天井に雨漏りの跡が残る。「夜に雨が降るとおちおち眠れない」。元整備工の勝次郎さんが隣家と合わせてブルーシートをかけた。

 4軒並びの平屋の借家で、1970年の大阪万博の頃に建った。7月の西日本豪雨で雨漏りがひどくなり、住民たちが不動産会社に「早く直して」と頼むと「(家主が)立ち退きを求めている」と告げられた。転居先を紹介し、年内の家賃免除、引っ越し代20万円を払う条件を示してきた。

 紹介物件は家賃が高く、弘子さんは「年金暮らしの身には払えない」。途方に暮れているとき、市内の住宅相談会で増田尚弁護士(大阪弁護士会)と出会った。増田弁護士は、雇い止めで家賃が払えなくなり立ち退きを迫られた非正規労働者らを救済してきた。門田さんらは立ち退き要求の撤回と修繕を求め、簡易裁判所に調停を申し立てた。

 民法では賃貸物件の家主に修繕義務がある。しかし家主側は1軒数百万円かかる見積書を示し、家主もまた高齢で「修繕費をかけられない」と主張している。

 地震後、茨木市は所得制限付きで修繕費の一部を補助する制度を設けた。家主か借り主かは問わず、上限は20万円だ。増田弁護士は「地震はとりわけ老朽家屋の高齢者や低所得者らに重い負担を強いた。しかし公的な救済制度が追いついていない」と話す。

 「借家と異なり、簡単に手放せない意味で持ち家もまた難しい」。大阪府高槻市を中心に、住宅再建に取り組む1級建築士の岩崎卓宏さん(53)は指摘する。

 JR高槻駅近くの70代の女性宅は72年に建った。地震で屋根の修繕に100万円余りかかった。壁と風呂を直すにはさらに140万円かかるため、自分で隙間を建材で埋めた。岩崎さんは「お金をすぐに用意できる人も少なく、助言に窮することが多い」と言う。

 高槻市は一部損壊の修繕費として最大5万円を支給するが、隣の茨木市と開きがあり、被災者から「もっと出ないのか」との声が届く。高槻市の石下誠造副市長は「地震は市町村単位で起きず、被災した自治体間で支援に差が出るのは好ましくない。国が制度をつくるほかない」と話す。

今年の災害で住宅被害最多

 総務省消防庁の11月6日時点のまとめでは、大阪北部地震の人的被害は死者が大阪府で6人、重傷が4府県で28人、軽傷が7府県で415人。住宅被害は大阪、京都、奈良、兵庫の4府県で都市部を中心に計5万8322棟にのぼった。7月の西日本豪雨の5万2033棟、9月の台風21号の5万869棟、北海道地震の1万368棟、台風24号の5744棟を上回り、今年の災害で最多だった。

 住宅被害は震源地に近い大阪府高槻、茨木両市が6割超を占め、高度成長期に建てられた古い住宅で屋根瓦の落下、壁の亀裂、柱の傾きなど一部損壊の被害が目立った。

 被災者生活再建支援法は全壊や大規模半壊のみが対象だ。そのため、大阪府は一部損壊以上の被災者に府営住宅などを「みなし仮設住宅」として無償提供(最長1年)し、修繕費を無利子融資するなどして支援。今月14日時点でみなし仮設住宅に86世帯が移り、融資申請は11月末時点で811件あった。

 被災自治体も一部損壊の修繕費に独自に支援金を出している。しかし最大5万円を支給する高槻市では、一部損壊2万2044棟に対し申請数は2321件にとどまる。施工業者の手が足りないほか、年金暮らしなどで多額の修繕費を出せない被災者が多いという。

 大阪府市長会は「屋根の損壊は一部損壊であっても生活に支障を与える」などとして、国に被災者生活再建支援法の対象拡大を要望している。(室矢英樹)

阪神大震災で被災住宅の調査にあたった神戸大大学院の平山洋介教授(住宅政策)の話

 近年多発する災害を超高齢化がより深刻なものにしている。一部損壊でも暮らしへの影響は大きい。現実には、年金しか主な収入がないお年寄りが高額の修繕費を賄うのは難しい。それが住宅再建を遅らせている大きな要因だ。国の施策は大きな災害が起きるたびに変わってきた。今後ますます超高齢化が進む。国は今回の地震を教訓に、一部損壊の修繕費へも支援を検討する時期に来ている。